林間学校⑧

目を覚ますと、俺はホテルの部屋にいた。


「・・・何で俺部屋にいるんだ?」


目の前には相川さんがいる。


「そういえば風呂で、あっ・・・」


俺は風呂で見た全裸の相川さんを思い出し赤面する。


「思い出さなくていいよ!」


相川さんも少し赤面していた。ふと部屋を眺めると相川しかいないみたいだ。


「・・・相川さんしかいないな。他の4人はどこにいるの?」


「裕奈たちなら今、土産物を買ってるって。あと30分は戻ってこないよ」


「そうか・・・で、班長会議はどうなった?」


「中止だって。点呼もないよ」


淡々と続く俺と相川さんの会話。俺、相川さんどころかみんなに迷惑をかけたしまったようだな・・・


「すまない。俺、相川さんどころかクラス全員に迷惑をかけたみたいだな」


俺は相川さんに一言謝った。


「いや、みんな迷惑をかけたなんて言ってないよ!」


俺は相川さんのその言葉にひと安心した。


「相川さん、本当に俺でいいのかな?お前のような人気アイドルに釣り合う人なんてそうそう・・・」


俺はこう相川さんに尋ねる。相川さんのような人気アイドルに俺が釣り合うのだろうか。その瞬間、


「渡辺くん・・・いや優斗、これから大切な話があるの。2人にしか言えない話」


突如、相川さんが俺に顔を近づけて話しをかけてきた。


「なんだよ相川、優斗って言うなよ。馴れ馴れしい」


「真奈って呼んで・・・」


相川さんの様子がおかしい。


「ま、真奈・・・一体何だよ。2人にしか言えない大切な話って」


俺は相川さんに尋ねる。すると相川さんはついたてをベランダ前に動かした。1人の女子高生が動かすにはかなりの労力だ。


「さて私と優斗の大切な話、始めよ?」


ついたてを動かした相川さんは自分の布団を俺の方に寄せて、布団に入った。


「俺、これから寝る支度するから少し待ってて」


俺は布団から上がり、洗面台に向かった。


「もー、優斗のいじわる。拗ねちゃうもん!」


俺が洗面台に向かうと、相川さんはそう言ってきた。


5分後、歯を磨きトイレを済ませた俺は部屋に戻った。部屋にある時計を見ると時刻は9時50分になろうとしていた。


「さて相川さん、俺への大切な話って何だ?」


「私はこれからあなたに3つの質問をします。まず、最初の質問。あなたは私のこと好きですか?嫌いですか?単刀直入に答えてください」


「好き・・・かな?」


俺は「好き」と答えた。しかしこの「好き」に恋愛感情はなく、ただ「好き」か「嫌い」かの二択なら「好き」という意味である。


「やった!では、次の質問です。あなたは今現在、私のことを一人の女性としてどう思っていますか?」


相川さんはまず最初に、俺にこう意味深な質問をしてきた。


「一人の女性として?」


「そう」


「そうだな・・・相川さんは可愛いし話してて楽しいと思っているよ」


「ありがとう。私、優斗が初めて好きになった人だから・・・」


そうだったのか。もし俺がフッたら相川さんに悪いことしたことになるのかな・・・


「そして最後の質問です。あなたは私の告白を受け入れますか?」


「えっ・・・」


俺は少しためらった。


「・・・正直相川さんは俺の理想のタイプだけど、大体知り合って1ヶ月も経ってないのに告白して付き合えって、友達付き合いならともかく。しかもお前は人気アイドル。付き合いたいのは山々だけど、もし今付き合っているのがバレたらどうなるのか。とにかく今は無理。付き合うなら高校卒業してからにしてほしい」


そう、これでいいんだ。


「そう・・・ゴメンね、優斗。私、迷惑かけちゃった」




それから2人は数分間黙り込んだ。時計の針は10時を回っていた。しばらくして4人が戻ってきた。




「真奈、告白どうなったの?」


植田さんが相川さんに話しかける。


「やっぱりフラれちゃった・・・」


相川さんの目は少し潤んでいた。

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