第133話 黒き箱舟

何処とも知れぬ暗い地の底の空洞に、その遺跡は存在していた。


その空洞にそびえる遺跡は、棺に似た形をした黒い箱舟であった。


その箱舟こそは地球へと逃れてきた、ヴァンパイア族の船。


吸血夜会の最初のホストの墓標であった。


その墓標を前に佇むは二人の人物。


一人は金髪に黒いドレスの少女。


もう一人は銀髪オールバックに執事服の美青年。


「・・・・・お墓参りなんてつまらないわ、トーマス。」

黒いゴシックロリータの少女、エリザベスが箱舟を見上げる。


「御父上から、お嬢様に我らがルーツを学ばせるようにとの御命令です。」

トーマスと呼ばれた銀髪の執事が恭しく礼をして答える。


夏のコミケを襲ったエリザベス、彼女こそ地球に逃れてきたヴァンパイア族の末裔。

様々な吸血鬼の一族郎党で構成される吸血夜会を最初に開いた主の血族。


それまでに開かれた夜会は13回、ヴァチカン等の討伐を耐え凌ぎ

今が最大規模の勢力の夜会。


「ご先祖様がどうかじゃない、私が何を成すかよ?

先祖にべったりなんて、日本のあの黒山羊男じゃないんだから♪」

自分の買い物を邪魔した進太郎を笑う。


主につられてトーマスも笑い、エリザベスにバスケットを差し出す。


エリザベスはバスケットから、ワインのボトルを取り出し箱舟へと投げつける。

彼女なりの祖先の霊への慰霊のつもりなのだろう。


「さあ、ロンドンへ帰りましょう♪お茶とお菓子の用意をなさい。」

エリザベスがくるりと箱舟に背を向けて歩き出す。


「かしこまりました、お嬢様♪」

トーマスもエリザベスの後へ付いていく。


この主従、他の勢力を焚きつけて自分達は喉を潤し享楽に耽るという厄介な手合い。


ヘルグリム帝国とは直接当たる事はせず、あの手この手で裏から手を回し

嫌がらせを続けてくる最悪の悪戯者であった。


訪問者達が去り、再び遺跡は静寂を取り戻す。


悪は再び闇にまぎれる、吸血夜会の次なる企みはまだわからない。


ヒーローヴィランも関係なく、吸血鬼達は闇の貴族を気取り自由気ままに戯れる。


・・・・・・吸血夜会、吸血鬼達の宴は続く。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る