第123話 血のハロウィン 序

「いや~~~~っ!!助けて~~~っ!!」


「・・・・何でっ?何で、私たちが火あぶりにされなきゃいけないの!!」

逃げ帰ったワルプルギスウィッチーズの魔女二人は縛られて火刑に処せられよう

としていた。


ここはセルビアのとある村、村人全員が吸血鬼のニュータントで構成される

吸血夜会東欧支部の制圧地域だ。


吸血夜会は密かにこうした自分達の領地を、ヨーロッパ各地に作っていた。

何も知らない哀れな生贄を手に入れる為に。


村の広場に打ち立てられた柱にくくりつけられた魔女達。

周囲には薪がばらまかれ口から牙を生やした村人達が次々と松明を放り投げて

火をつけて行く。


「何で?作戦に失敗した無能は処刑されるに決まっているでしょう?」

村人達を割って、カブでできた白い仮面を被ったカソック姿の男が言う。


「折しもハロウィンが近いです、祭りの生贄になってもらいましょう。」

カブ男の声と同時に、一斉に炎が燃え上がり哀れな魔女達は炎の中に消えた。


ハロウィンの紀元の一つとされるのはドルイドの新年の祭りで、盛大に火を焚き

その周りでドルイド僧が舞い踊りと火の祭りであった。


「日本人は祭りが好きらしいですし、東京で血祭りをして上げましょう。」

魔女達の断末魔さえ掻き消す炎を見ながら、仮面の下でカブ男は笑った。


一方その頃、進太郎とメイド達ヘルグリム帝国と元気は東京に来ていた。

「ハロウィン一色だな、相変わらず。」

元気が呟く。


東京の帝国大使館別館では、モンスターメイドや執事達が楽しそうにハロウィンの

飾りつけをしていた。

「毎日がハロウィンって言われるのも慣れた。」

ヘルグリム帝国産のカボチャでできた、パンプキンパイをつまみつつ進太郎が

答える。


「美味いな、やっと食えたよ魔界料理。」

同じく元気も食う、ニュータントになったので魔界の料理も気にせず食えるように

なりバクバク食っては発火してカロリーを燃焼する。


「そりゃ今まで、感染や発症の恐れがって出せなかったからな。」

進太郎がタブレットPC見ながらつぶやく。


「今回の東京での仕事、ヴィラン対策室主催のハロウィンイベントか。」

元気がぼやく、お台場で開かれるヴィラン対策室主催のハロウィンイベントとは。


本物のヒーロー達によるヒーローショーと、物販コーナーでサイン会兼握手会と来場者へのプレゼント配布と観客としてなら楽しいイベントだ。

「教官や先輩達が、気合入り過ぎてて辛いんですけどね~~~~っ!!」

元気がばんばんとテーブルを叩いて愚痴を叫ぶ。


観客としてなら楽しくても、キャスト側は大変なんである。

「神威さん、舞台稽古でイキイキしてたからな~あの人芸能界でも食ってけるよ。」

ジャージ姿でダンスや立ち回りに台詞の読み上げと、進太郎も稽古の事を思い出す。


ストーリーは会場にヴィラン達が攻めて来たのを、神装刑事ジャスティス率いる

ヒーロー達が協力して倒す。


司会に特撮でもおなじみの声優(男性)も参加するとか、聞いている。


「何で、司会に駒門飛鳥さんとか起用しないかな~?対策室。」

元気がまた愚痴をこぼす。


「問題が起きたらまずいからだろ?」

参加ヒーロー、何気に自分達も含めて健全な10代な男子とかいるし。


「ヒーロー業界に出会いを求めるのは、間違いじゃないはずだろ?」

元気は、健全な10代の男子であった。


ボンクラヒーロー二人は明日も稽古にプレゼントの梱包かなどと、まったく事件の影に気づいていなかった。















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