第72話 68代目の重み

トロールとの対決の後始末を3日で終えた進太郎、彼は学校の

机でだら~んとしていた。


時は放課後、9月の半ば夏休みボケも抜ける頃。

そんなだらけた進太郎の背中を


「しゃきっと、しなさいっ!!」


バーンと音を立てて張り倒すのは、川原春子だった。


春子本人としては活を入れたつもりだったが、進太郎

の背中からは白い煙が立ち込めていた。


「・・・・すごい、川原さんあの魔王を一撃で!!」


「・・・・・あれこそはまさに、ゴッドハンド!!」


「聞いたことがある、相撲は魔を払う神事だから悪魔に効くんだ!!」


・・・・・・散々な言われようだが、進太郎より春子が強いと言うのが

桃川学園での公式の見解であった。


当の進太郎は、この世でも魔界でもない所に意識を飛ばされていた。


どこともわからないが綺麗な空の下、綺麗な川が流れている。


川の向こう岸には、65人?または65匹?の人に近い姿の山羊っぽい

異形の集団が並んでいた。


どの異形もローマ人っぽかったり、鎧姿だったりと豪奢な姿であった。


不思議と進太郎は、その異形達に強い親近感を感じていた。


川の向こう岸へ行きたくなり足を動かそうとした時、異形の一人が叫んだ。

「進太郎、来ては行けないっ!!」


異形の叫びに、進太郎はなすすべも無く倒れ平伏させられた。


「愛しい我等が子孫よ、やがてゴート68世となる者よ。

そなたはまだ死すべき運命に無い、現世に戻るのだ。」


つぶらな瞳に金髪をなびかせたローマ人みたいな黒山羊男が

語りかける、それは間違いなく肖像画で見た進太郎の曽祖父だった。


「・・・・・ひいおじいちゃん、俺もう疲れたよ。」

進太郎は涙する。


「お前の頑張りは見ているここで魂を癒したら、現世にお帰り。」

曽祖父が進太郎を撫でる。


「案ずるな、我等全員が力を貸そうそなたは一人ではない。」

今度は黄金の鎧を纏った黒山羊男が語りかける。


「子を沢山なし育て上げ、帝国の未来を紡ぐのだ。」

全裸で筋肉質な黒山羊男が豪快に笑う。


次々と歴代皇帝である先祖達が、進太郎を慰め力を貸すと約束していく。


そして最後に、触手が全身から映えてる闇の塊が山羊人間みたいな形をした

混沌としたSAN値が激減しかねない初代皇帝の魂が

「68世となるものよ、そなたの大業を我らも支えよう現世に戻るのだ。」

と言うと、闇の触手を伸ばして進太郎を絡め取り現世へと投げ飛ばした。









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