第46話 北の国で その3


ロシアのとある空港に飛行機が降り立つ。


案内人のロシア人男性に続いて

「これも人間界と魔界、一般人とニュータントの架け橋になる一歩だ。」

と言って帽子にコートに耳当てにマフラーにと、厚着の進太郎が下りてくる。


メイド服のアニーに続いて、上下赤い軍服を着た黒毛の人狼を十人ほど引き連れて

飛行機を降りて、ロシアの大地に立つ。


黒毛の人狼達が、ヘルグリム帝国の人狼達で編成された特殊部隊。


その名も『ファングパック』と言う。


空港を出るとこちらを迎えに来た、装甲トラックの荷台部分に全員乗せられた。


トラックが着いた先で下ろされて、案内された無機質な建物で

いよいよ個人戦闘力世界最強の大統領と対面かと思いきや。


その代理人という男が、クライアントだった。

「ようこそ、ヘルグリム帝国の皆さん。私が大統領の代理のタチバナです。」

タチバナと名乗った男は流暢な日本語で語りかけてきた。


「お招きいただきありがとうございます、ガスパヂーン・タチバナ。」

ビジネスライクに返答する進太郎。


タチバナは話を続ける。

「依頼したい作戦は出来ています、吸血夜会と組んだマフィアの息のかかった病院。

マフィアの構成員が病院から、少年少女や子供達を港へ運ぶ際に襲撃。

マフィアに成りすまして取引の現場に向かい、吸血夜会の構成員を殲滅後撤収。」


と作戦の概要を述べて、作戦指示書を進太郎に渡す。


「指定された日時に作戦を決行か、逮捕しなくても宜しいのですか?」

進太郎がタチバナに確認を取る、情報を吐かせる必要があるはずだと思ったから。


「逮捕の必要はありません、敵は中国政府の一部と結託しているようで逮捕しても

解放させられました。日本的なやり方に捕らわれず活動していただきたい。」

タチバナが、さらりと自分達に従うように釘をさす。


タチバナと軽いブリーフィングを終える。

「私達ただの刺客でちゅね、不満極まりないでちゅ!!」

アニーは怒った。


「おのれ、殿下は殺し屋ではないのだぞ!!」

人狼の隊員達も憤る。


「胸を張って誇れる仕事じゃないが、顔を上げて戦おう。」

進太郎はアニー達にそういって、仕事に取り掛かることにした。





















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