Enemy Side

「あれをかわすなんて、お嬢さまの元カレは結構やりますね」

 後ろの座席で足を組み、優雅に扇であおぎながらドン・ペリエは涼しい顔をして言う。

 ウミネコは無表情に前の席に座っているが、そのコクピットは両手両足を全て操作に使用するタイプだ。

 サポーターの経験者をパイロットに起用する。これほど心強い事はない。

 メイドが城を移動する事は自由だ。だがそれは認められているというより、誰もそんな事はしないから規制されていないだけだ。

 メイドは義理に厚いし、城も裏切り者には厳しい。

「僕はスナイパー。相手の心の隙を突く事が得意なんですよ」

 戦いの前から動く事が出来る、唯一のジョーカー的属性、それが『銃器』。

 別の居城をスコープで覗き心の隙を撃ち、心を殺して意のままに操る。

 それでいて強力な機体を持つ、まさに悪魔だ。


 だがその強さのハンデか、サポーターは機体を操作できない。全てパイロットの腕にかかっている。

 ゲームを面白くするために気紛れで入れられたトリッキーな駒。だがその特殊性故に歴代の銃器はほぼ初戦で敗退するのが通例だ。

 それが……、

「これほど楽に進められるものとは思わなかった」

 笑いが止まらない。

 なんと女の子の純粋な心を弄ぶ男の多い事か。


「今の時代に、騎士ナイトはいない」

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