第十七章 演説(1 序)


〈 序 〉


( 1 )総会議長閣下、国連事務総長閣下、聡明なる大使の皆様、大臣閣下、そして皆々様。日本国政府の特命政務官として、これから私が行う提案を傾聴してくださるご厚意に感謝申し上げます。


〈 Preamble 〉


( 1 )Your Excellency Mr. President of the General Assembly, Your Excellency Mr. Secretary General of the United Nations, Your Excellencies distinguished Delegates, honorable Ministers, ladies and gentlemen, as a ministerial aid extraordinary of the Japanese Government, I would like to thank you for kindly agreeing to listen to the proposal I am now going to make.




 マイクを通した万三郎の声は、静謐なる総会議場に流れては、わずかな残響に分裂して、消えていく。そしてその声はことだまワールドまで聞こえてきている。


 万三郎の演説と平行して、ユキと杏児は、スピーチの最初の部分の、やや儀礼的なワーズたちを次々に送り出していく。それは、スタンバイしているワーズたちの背中を叩いて押してやるだけの行為に見えるが、その瞬間、ワーズ自身がもともと持っていることだまエネルギーに、ETが持つ、桁が一つ二つ大きいエネルギーを追加注入しているのだった。


 リアル・ワールドにおいて万三郎が立っているであろう演台の辺りには、白い光輪が強い光を放っている。各国代表が座っている椅子にはそれぞれぼうっとした光を放つエネルギー体が「腰かけて」いた。


 メディア席は吹き抜けの議場の二階にあり、一面のガラス窓を通して、直下の演台から各国代表席まで見下ろすことができる。


 ユキと杏児に背中を押されたワーズたちは次々に直下の万三郎のエネルギー体に向けて「滑空」するように飛んでいき、万三郎を経由して無数の光に分裂、加速して、議場の各席のエネルギー体に同化して次々に消えていく。今、儀礼的あいさつを終え、そして万三郎のスピーチは本題に入ろうとしていた。

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