白夜...vol.3

 男二人で花火ってのは、どうなんだろう、と思ってはいたけれど、予想以上につまらなくて驚いた。

 しかも、終電を逃して朝まで暇をもて余した、草臥れたサラリーマンだ。

 近くのコンビニで大量に買い込んだ花火に、片端から火を点けた。

 あっという間に、あたり一面、燃え終わった花火の残した煙で、真っ白になった。

「……白夜みたいだ」

 僕は、思わずそう呟いた。

 煙に、花火の色とりどりの光が反射して、やけに明るかった。

 僕らは、口に出したところでどうにもならない愚痴なんか言いながら、

 次から次へと、花火に火を点け続けた。

「だからさ」

 彼は、遠い目で言う。

「ひとりきりになりたかったら、月にでも行けばいいんだよ。

 何か求めようにも何もないし、叫んでも届かない」

 完璧だ、と。

「息も出来ないよ」

 僕は、静かに反論する。

 そのとおり、と彼は頷く。

「呼吸くらいはしたいと思うなら、そいつは」

 寂しさってやつじゃないかな。

 小さな声で、そんなことを言う。

 なるほど、まったくそのとおりだ、と。

 僕も、やはり小さな声で頷く。

 そうして、僕らの白夜は更けていく。

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