第224話 協力者
捕まえた襲撃者から、メキドの情報と、黒幕であるズオルドの情報は聞き出せたけど、クロートスのお姉さんの情報は聞くことができなかった。
もう、情報も聞けそうにないので、とりあえず、襲撃者たちを、街内で戦闘を仕掛けてきた不審者集団として、都市の衛兵に突き出すと、俺たちは宿で、今後の対策を話すとこにした。
「とりあえず、ズオルドが黒幕だってわかったんだし、締め上げて、居場所をはかしたらどうだ」
ポーズが考えなしでそう発言するのを聞いて、リンスが呆れたように答える。
「あんた本当に馬鹿ね・・なんの証拠もないのに、そんなことしたらダンジョンギルドだけじゃなく、大陸政府機構や、冒険者ギルドとかも敵に回しちゃうでしょう」
「だってよ、そのズオルドってのは悪人なんだろ、遠慮することはねえだろうが」
もちろんズオルドに対して遠慮もしないし、戦う必要があるのならダンジョンギルドとだってことを構える気ではある。だけど、もしかしたら、これはズオルド個人の暴走であって、ダンジョンギルドは無関係ってことも考えられるからな・・
そんな話を宿の一室でしていると、スフィルドが声をかける。
「ドアの向こうに誰か来ました・・・敵意はないようですけど・・」
そう言われて、俺は部屋のドアに近づく。アルティとマゴイットも、俺についてきて、何があってもいいように警戒している。
するとドアがコツコツとノックされた。そっと紋次郎がドアを開くと、そこにはエルフの女性が立っていた。紋次郎はその女性を見て、どこかで見覚えがあると感じていた。
「ええ・・と、あなたは確か・・・」
「はい。ズオルド・アルべの秘書の、カサブランカです。ご無沙汰しています、マスター紋次郎」
そうだ、以前、ダンジョン評議会でお世話になったカサブランカさんだ。そういえば、あの時、俺らに、警告してくれたのを思い出す。
「それで、どんな要件ですか」
そう聞くとカサブランカはこう話を切り出した。
「ズオルドの裏の顔について、情報を持ってまいりました」
分かりやすい、ストレートな話だけど・・俺たちはその内容に戸惑う。
「どうして、その話を俺たちに持ってきたんですか」
「それはあなたたちが、それを必要としているからです。違いますかマスター紋次郎」
違わないけど・・さすがに敵と思っている人物の秘書の言葉を、どこまで信用していいか、戸惑っていた。しかし、情報が欲しいのは事実である。とりあえず彼女の話を聞くことになり、部屋の中へと招き入れた。
「それで、ズオルドの情報って何ですか」
「ズオルドがメギドという組織の総帥だという話はもう知っていますか」
「はい。それはさっき、襲撃者から聞き出しました」
「では、そのメキドの本部の場所の情報とかに興味ありませんか」
カサブランカはドンピシャで欲しい情報の話を始めた。あまりにも、こちらの欲しい情報なので、逆に怪しくはある・・・
「あなたはズオルドの秘書ですよね・・どうして、そんな上司の不利益になる情報、他人に伝えようとしてるんですか」
俺が疑問を彼女に質問すると、カサブランカは、軽い感じでこう答える。
「私はダンジョンギルドのマスターであるズオルドの秘書です。メキドとかいう怪しい組織の総帥のズオルドなど、どうなっても知りません」
それは本音のように聞こえる。だが、真意は、ダンジョンギルドのマスターであるズオルドも、どうなっても良いという意味にも取れるが・・・
「では、そのメキドの本部の場所を教えてもらえますか」
こうして、カサブランカさんから、メキドの本部の場所を聞き出すことに成功した。多分、かなりの確率で、この場所に、クロートスのお姉さんが捕まっているはずだ。
「マスター紋次郎・・」
「あっ、なんででしょうか、カサブランカさん」
「メキドの本部には、上級魔族の精鋭や、旧約悪魔などが無数にいます。普通の冒険者では手も足も出ない危険な場所です。あなたは強い人です。必ず・・必ず仲間を守ってください」
ふむ・・もちろん強敵がいるのは予想できるし、仲間を守るのは当然のことだから、問題ないんだけど・・・どうして、カサブランカさんが、俺の仲間のことを気にするんだろ・・
「もちろん。俺は仲間を守りますよ。それは約束します」
そう言うと、カサブランカさんは少し笑顔になる。
カサブランカを見ていたスフィルドが、何か気になることがあるようで、リンスに話しかける。
「リンス。あのカサブランカってエルフだけど、あなた知り合いじゃないですか」
「え・・確かにどこかで会ったことがある気はするんですけど・・思い出せないんですよね・・」
「そうですか・・・どうもあなたと同じ匂いがするので気になりまして・・」
「匂い? でもカサブランカさんはエルフで、私はハーフエルフですから、種族も違うと思いますし・・」
「まあ、記憶にないなら気にしなくていいですね」
でも、スフィルドにそう言われると、やはり、カサブランカにはどこかで会ったような気がしてくる。それも心の深いところで、その記憶が疼いているように感じがしていた。
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