第210話 鉱石ダンジョン

洞窟の奥に広がる、少してかりのあるカラフルな地層を見て、メタラギが喜びながら走っていく。


「これは素晴らしい鉱脈じゃ、とんでもない質と量じゃ」


無論、偶然この鉱脈を見つけたわけではない。スフィルドが良い気の流れを感じる場所を案内してくれて、ここが見つかったのであった。


この場所に来るまでに、もちろん戦闘もあったが、ヴァジュラやアテナといった戦闘に特化しているメンバーも揃っているので、この辺りのモンスターは一掃していた。その為に、採掘を邪魔されることもなく、スムーズに地上へと運び出すことができるであろう。


「この辺りは、宝石の原石もかなり埋まっているわね、しかもかなり魔力と高い高品質のものみたい」

デナトスが、鉱脈を見てそう言う。


早速、メタラギたちは、鉱脈を採掘し始めた。実際採掘するのは、メタラギと、デナトスである、そして岩壁の中も見える、スフィルドが鉱脈の位置を探していく。残りのメンバーは、採掘した鉱石と宝石の原石をどんどん運んでいった。


デナトスが採掘していた壁に、少しの違和感を感じた。別の場所で採掘していたメタラギにそれを相談する。


「メタラギ。ここの壁に、異常に硬い部分があるんだけど・・ちょっと見てくれる?」


なんじゃ、なんじゃとメタラギがその壁を調べ始める。

「大変じゃ、これはオリハルコンの鉱脈じゃないか! この量じゃと大変な価値じゃぞ!」

「オリハルコンですって! メタラギ! すぐに採掘しましょう」

「おう・・わかっておる。デナトス、すまんがこの壁を爆裂魔法で粉砕してくれるか」

「いいけど、そんなことして大丈夫なの?」

「オリハルコンの鉱石が、魔法くらいで傷ついたりせんよ。安心してぶっ放してくれ」


「了解、メタラギは危ないから離れてちょうだい」


そう言うと、デナトスは強力な爆裂魔法の詠唱に入った。

「ギガ・エクスプロージョン!」


空気の振動のような強烈な魔法波が、目の前の壁に直撃する。強烈な細かい衝撃が壁一面に広がり、月煙を上げて、ボロボロと吹き飛ぶように崩れ落ちる。


壁のあった場所には、大きな空洞と、3メートルほどの丸い鉱石の塊が残った。どうやらそれがオリハルコン鉱石のようである。


「これだけの量があれば、オリハルコン装備のセットが1ダースは作れるぞ」

「これを売るだけで大儲けね」

「そうしたいが、エイルの契約があるからのう。なんとも迷宮主の契約とは面倒なものじゃ」


鉱石を採掘して、それを売るだけで儲けるのは、鉱夫の仕事である。迷宮主の契約を、契約の女神エイルと交わしている紋次郎たちにはそれはできないことであった。


グワドン、カリスとアテナが、大きなコンテナのような箱を持ってきた。それは鉱石を運搬する為に用意したものであった。


「グワドン、アテナ、カリス、これを運んでくれ」

メタラギにそう言われて、三人は鉱石を箱にどんどん入れていく。箱がいっぱいになったら、三人でそれを担いで、ダンジョンの出口までそれを運ぶ。それを繰り返した。


オリハルコン鉱石の鉱脈の他に、ダイヤモンド原石の鉱脈も、その奥で見つけた。かなりの高品質のダイヤモンドで、強大な魔力を感じる。

「すごいわ・・・惚れ惚れしちゃうわね」

デナトスはダイヤモンド原石を見て、思わずそう呟く。


メタラギとデナトスは、今回の収穫で、かなり良質な装備が作成できることを予感していた。



紋次郎は日が暮れる前に、新しい自宅へと帰ってきていた。かなりの数のモンスターを雇うことができたので、今回のスカウトは大成功である。しかもみんな無欲で、かなり低賃金で働いてもらえそうであった。


「まだ全然足りないけど、幸先としてはいい結果だったね」

「そうですね、ボス級が足りませんけど、頭数としては悪くない結果ですね」


そこへ採掘を終えたデナトスたちも帰ってくる。

「あら、紋次郎たちも戻ってたの、モンスターはどうだった」

「かなりの収穫だよ。ロイヤル・ケットシーを仲間にできた。そっちはどうだった」

「ロイヤル・ケットシーって、すごいレアモンスター捕らえたわね。こっちも良い収穫よ。オリハルコン鉱石とかダイヤモンド原石とか、文句なしね」


どちらの収穫も良いみたいで良かった、片方だけ豊作だったら、なんか気まずいもんね。新ダンジョンの営業開始の準備も順調に進み、明日には新しく雇った人たちも、ここへ来る予定になっている。スタッフが全員揃うことを思い、紋次郎は新人歓迎会を開くことを思いついた。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る