第200話 絶望なる面接
今の所、採用率100%と、激甘の面接を行っている俺たちだが、そろそろまともに採用の是非を見ないといけない。そう考えていたのだが、次に入ってきた人を見て、その考えが揺らいだ。とてつもない美貌のエルフがそこに座っていた。うちには、デナトスやリンスなど、綺麗なエルフはいるけど・・残念ながら目の前にいるこの彼女は、少し次元の違う美しさがあった。
「フィスティナです。レベルは140のエレメンタラーで、秘書技能も持っています」
そう自己紹介してくれるフィスティナの胸元は大きく開いていて、その豊満な中身が少し見えていた。しかし、その胸の魅力は別として、有能そうな人なので、文句なしで合格かなと思っていると、なぜかリンスたち女性陣の面接官が、不合格にしようと小声で話してくる。
「え、どうして、優秀そうだよ」
俺が不合格の意見にそう言うと、リンスがこう返してくる。
「秘書は私がいますので、もう必要ないです」
「そうだけど、冒険者としても優秀そうだし、エレメンタラーって精霊使いだよね、何かと使えるんじゃない?」
それに対しては、デナトスが冷静に否定する。
「いえ、精霊使いなど邪道な法術です。そんなの使う者など信用できません」
「そうだな、あたいも不合格でいいと思うぜ、あんな胸をはだけた女なんぞ、信用できん」
と、みんなは言ってくるけど、俺はその意見に納得できなかった。
「みんな、よく考えてよ。ゴブリンやおばあちゃん合格にしたのに、優秀そうな彼女を不合格ってなんかおかしくないか」
その俺の意見には、アズラヴィルも同意してくれる。
「僕は良さそうな子だと思うけどね、優秀なのもそうだけど、あれだけ見た目が良いと、花があっていいじゃないかな」
アズラヴィルの言葉に続いて、スフィルドは、みんなの心の内をぐさりと一刺しする一言を発した。
「花がありすぎるから嫌がってると思います。フラフラしているミツバチが、あの美しい花に行ってしまわないか、リンスたちは心配でならないんですよ」
どうやらスフィルドの言葉に、思い当たることがあるようで、リンスたちはそれで黙った。俺が、それじゃ、合格にするよっと聞いたら、震えながら頷いている。
合格を伝えると、フィスティナは笑顔を見せて挨拶すると、部屋を退室した。
「おいミツバチ! どんどん合格にしてくれてんな。ちゃんと考えろよ!」
ポーズがそう俺に言ってくる。なぜミツバチなのか意味がわからない。
この後、当たり障りのない、普通に優秀そうな人が続き、不合格にする理由もないので、全て合格となった。さすがにこのまま全員合格かと考え始めた時、問題児が入室してきた。
それは、どう優しく見ても、禍々しい者としか言えない存在であった。恐怖の大王を想像して絵に描くと、こんな感じになるんじゃないだろうかと思うくらいの風貌である。
「え・・と、君は悪魔か何かかな」
しかし、その者は静かにこう答える。
「いえ、自分、こう見えても、人間ですから」
いや、絶対人間じゃないよね・・・と思ったが、さすがに直にそう言うのは気が引けて、遠回りに指摘する。
「いや・・どうも君の見た目は、人間から遠いというか・・かけ離れているというか・・・」
「そうなんです。個性的とよく言われます」
どうやら個性で片付けようとしているみたいだ。
「それじゃ、名前とか年齢とか、レベルやジョブを聞いていいかな」
「名前はアモン。年齢はじゅうま・・いや、ええと、31歳です。レベルは300くらいだと思います。ジョブってなんですか?」
「職業というか、何ができるかって基準というか・・」
「あっ、それじゃ、僕はあれです、大工です」
「本当に大工なんですか」
「はい。家とか塔とか城とかなんでも作れます」
さすがに胡散臭いことを言ってるので、小声でスフィルドに確認する。
「まあ、全部嘘だと思うけど、どうかな、スフィルド見える?」
「はい、見えます。意外なことに、人間でないと言うこと以外は本当です」
「えっ、そうなんだ・・・」
大工は欲しいんだよな・・でもどうなんだろう・・と俺が悩んでいると、面接している部屋の扉が開かれた。そしてリリスが入ってくる。
「お主の気配がしてるからもしかしてと思ってきてみれば・・・アモン! ここで何しているのじゃ」
「リリス・・・会いたかったよ・・・僕がどれだけ心配したか・・召喚光に飲み込まれて、ピュホーンから出て行って、全然帰ってこないんだから・・」
そのやり取りを見て、俺はリリスに聞く。
「知り合いなのかリリス」
「よく知っておる、私の婚約者じゃ」
「そうなの?」
「じゃが、それは親が勝手に決めたこと、私は認めておらぬ」
「そんなこと言わないで・・結婚してよリリス・・」
「いやじゃ。それより、お主、どうやってピュホーンから出てこれたんじゃ」
「この間、リリスの時と同じように、召喚光が出現したんだよ。そこにいたレッサーデーモンが取り込まれそうになったから、それを退けて自分が入ってきたんだ。そしたら地上にこれたんだ」
「チッ・・面倒くさいことしよってからに・・」
とりあえずリリスの知り合いということで、身分もしっかりしていることから、彼を合格とした。やはり大工ってのは魅力だ。もちろんリリスは嫌がっていたけど、そこはなんとか説得してみるつもりである。
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