第99話 小さな炎
ムーンランベの街はずれにある商店。そこには両手いっぱいに食べ物を抱える子供達がいた。紋次郎は店主に代金を支払うと、子供達を見る。彼らは紋次郎に軽く会釈をすると、廃墟の方に走って行った。それを見送りながら、紋次郎は、やっぱりあの子達が気になり始めた。少し悩んだけど、もう一度あの廃墟へと足を運ぶことにした。
集落の廃墟の1つの家に、あの少年少女はいた。そこは他の廃墟よりは比較的痛みが少なく、少し清掃されていた。そこで子供達は俺に買ってもらった食料を貪り食っていた。
「どうだい、美味しいかい?」
その俺の声かけに、驚きの顔で子供達は反応する。年長の子供が顔を真っ赤にして俺に言ってくる。
「こ・・この食べ物は・・・返さないぞ!」
それに対して、俺は笑顔を見せて否定する。
「大丈夫、返せなんて言わないよ、それより少し話を聞いていいかい?」
お互いの顔を見合わせ、子供達はゆっくりと首を縦にふる。
「君たちはここに住んでるの?」
「そうだよ、ここが俺たちの家だ」
「君たちだけでいるの、親はどうしたんだい?」
その質問には少し戸惑いを見せる。もじもじと少し悩んでいたが意を決したようにか答える。それは短い答えであった。
「死んだ」
少し想像はしていたけど、そのままの答えに俺は戸惑う。
「そうか・・全員の親御さんが亡くなったの?」
「みんな殺されたよ・・・」
その答えには驚きを隠せなかった。死んだのではなく、殺された・・衝撃の事実にどう反応していいかわからない、これはもう少し詳しく聞いた方がいいんだろうか、少し悩んだけど俺はその全てを聞く覚悟をした。話を聞くからにはある程度責任が生まれる。
「嫌だったら話さなくてもいいんだけど、よかったら何があったか話してくれるかい?」
しばらくの沈黙の後、少年は話し始めた。
「この湖には小さな島がたくさんあって、その1つの島に僕たちは住んでいたんだ。そこにあいつらがやってきたんだ・・」
「あいつら?」
「そうだよ、この辺に住んでる盗賊団で、悪い奴らなんだ。父ちゃんたちがやつらの言うことを聞かなかったから、みんな殺されちゃったんだ。母ちゃんたちが俺たちだけは船で逃がしてくれたんだ・・・」
「盗賊か・・・」
どこの世界にも弱い者を食い物にするやつらはいる、この子たちはその犠牲になったんだな。
「僕たちが大きくなったら、絶対に母ちゃんや父ちゃんの仇を討つんだ」
少年は強い目でそう言った。俺はこの子たちに何をしてあげれるんだろうか、お金を渡して、元気でな、なんて声をかけるのは簡単だけど、それじゃあなんの解決にもならないような気がする。
この子達に俺に何ができるか・・みんなに相談してみようかな・・そう思い、一度宿へと戻ることにした。
宿に戻ると、ポーズとメタラギは完全に出来上がっていて、俺に変な絡み方をしてくる。
「おぉ〜い、主・・どうだぁ元気かぁ〜うぃ〜いヒッ」
「おい、紋次郎、お前も飲め! 飲まんのか、じゃぁワシが飲もうかのう。ははははっ」
・・・とりあえずこの二人とは絡まないようにしよう。そんなことを考えていると、リンスたちが買い物から帰ってきた。
「紋次郎様、ただいま戻りました」
「おかえり。リンス今ちょっといい? 相談があるんだけど・・」
「あっ、はい大丈夫です、ちょっと荷物だけ部屋に置いてきます」
そう俺が言うと、リンスは何やら少し嬉しそうである。急いで荷物を置いて、すぐに戻って来た。アルティとデナトスも気になるのか、ラウンジの俺のテーブルへとやってくる。グワドンは宿に入れないので、離れの自分の部屋に戻ったようだ。
「悩み事って何よ紋次郎、リンスじゃなくて私に相談すればいいでしょう」
そう切り出したデナトスに俺は言葉を返す。
「デナトスとアルティも聞いてくれるかい、ちょっと困ったことがあってね」
そして俺は3人に、あの子供達の話をした。黙って聞いていた3人は複雑な表情になる。
「それは確かに難しい問題ですね」
「ムーンランベって自治政府があるんだっけ?」
デナトスはそうリンスに聞いた。リンスは少し考えて答える。
「確かそうです、街の議会が中心で、独自の統治を行っているはずです。孤児などの受け入れについては情報がないのでわからないですけど、もしかしたら施設などがあるかもしれませんね」
「リンス、それはすぐに調べられる?」
「はい、ちょっと確認してみます」
そう言ってリンスは、どこかに出かけ、30分ほどで戻って来た。
「ムーンランベが運営する孤児院がありました。そこで受け入れてくれそうですね」
「よかった。じゃあ、早速子供たちを迎えに行ってくるよ」
「私も行きます」
子供たちを迎えに、先ほどの廃墟へと向かった。結局3人とも同行してくれている。
しかし、廃墟について、あの子供達がいる家へと入ろうとしたのだけど、違和感を感じた。リンスたちもそれを感じたみたいで、急いで中にはいる。そこには、あの年長の少年が血だらけで倒れていた。その手には小さいナイフがぎゅっと握られていた・・
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