第82話 不死の者
ポーズたちは担当の、最後のダンジョンを攻略していた。そこはアンデットが蔓延る、不死の軍団の巣窟であった。ゾンビやスケルトンなど下級から、ワイトやスペクターナイトなど上級のアンデットモンスターと多種にわたって配置されていた。
「メイルがいりゃあ楽なんだけどな、これだけの数のアンデットだとさすがに手間だな」
メイルは回復魔法の他に、ターンアンデットやホーリーライトなど、対アンデット魔法も得意としていた、こういったアンデット主体のダンジョンではその力を存分に発揮していただろう。しかし、それは無い物ねだりであり、現状は今の戦力でどうにかしなければいけなかった。
「リリス、何やってんだよ早く攻撃しろ!」
「う・・・ん、やっぱり私はアンデットが苦手のようじゃのう・・」
「何言ってんだよ、お前悪魔だろう?」
「悪魔とアンデットを一緒にしてるのか御主!」
「似たようなもんだろうがそんなもん」
「失礼な! あんなウニョウニョのぐちゃぐちゃと気品ある私たちを同列に見るなんて・・・」
「まあ・・どうでもいいから攻撃してくれ・・数が多くてどうにもなんねえだよ」
「仕方ないのう・・・」
そう言うと、リリスは面倒くさそうに、いや、ちょっと恐れを抱いた感じだろうか、その対象に向かって攻撃魔法を放つ、軽くはなったその魔法は、上級アンデットを簡単に粉々に粉砕する。
「ちゃんとやれよリリス!」
「うるさいのう、やっておるではないか」
こんな状況で、一番の活躍を見せていたのは意外にソォードであった。彼は黙々とアンデットをその剣のサビへと変えていった。
「私の! 剣の前では! アンデットなど! 敵ではないです!」
「すげー頑張ってんなーソォード・・」
「そうじゃのう、何かの鬱憤でも晴らすような感じじゃのう」
一番の戦力であるリリスが、アンデットが相手ではあまり頼りにならないことが判明したが、ソォードを中心とした、その他の活躍により、ダンジョンの最深部、ボスの部屋と思われる場所へと到着した。
「さて、何が出てくるか」
「まあ、ダンジョンの傾向から、おそらくボスもアンデットなんじゃないですかね」
ソォードのその考えはそれほど外れてはいなかった。その部屋の四隅から、多数のコウモリが飛来してくる、それは中央に集まり、渦を巻くように飛行すると一まとまりとなり、やがて黒い1つの影へと変貌した。
「おいおい・・まさか・・あれがでてくんじゃねえだろうな」
「うむ・・そのようですね、ちょっとこれはやばいですね」
「何? 何が出てくるのじゃ?」
ポーズとソォードの予想通りにその黒い影は、人型へと姿を変えていき、大きなマントを翻す。その口には美しく鋭利な牙を携え、こちらを見下すように見つめてくる。
「やっぱりヴァンパイアか・・これは厄介だな・・」
「そうですね・・普通の攻撃ではダメージすら与えられないですよ・・さてどうしたものか」
アンデットの中でも最上級の力を秘めるそのモンスターに、ポーズとソォードは恐れをなしていた。もちろんその強さもそうなのだが、ヴァンパイアの一番の強さはその不死身の能力であった。普通の物理攻撃では致命傷を与えることもできず、魔法攻撃でダメージを与えても、すぐに再生してしまう。聖属性の魔法なのでその存在を滅するなど、倒す方法はそれほど多くはなかった。
「なんじゃ、あのバカ紳士は?」
「リリス・・・お前ヴァンパイアを知らねえのか?」
「知らぬぞそんなもん」
「アンデットが嫌いだから、そういう知識にも疎いんだな」
リリスは、知ってか知らないのか、そんなポーズの嫌味にも表情を変えない。
「まあ良い、敵じゃろうあれは?」
「そうだけど・・・・」
ポーズがそう返事をする前に、リリスは手から激しい閃光を放ち、ヴァンパイアを撃ち抜く。ヴァンパイアは体の中心を撃ち抜かれ、でっかい穴が開く。しかし、その穴はみるみるうちに再生していき、その穴を塞いでいく。
「ほう・・すごい再生能力じゃな、しかしこれならどうじゃ」
そう言ってリリスは先ほどの閃光より大きな光でヴァンヴァイアをさらに撃ち抜いた。先ほどと同じように、ヴァンパイアの体に穴が開く。そして先ほどと同じように穴は再生していく・・・がどうも様子がおかしい。再生しては穴は広がり、再生しては穴は広がりと、完全に再生できない。そしてやがて再生する速さを、穴が広がる速さが上回り、穴はどんどん広がり始める。その穴は体中に広がり、ヴァンパイアはその穴に飲み込まれるように消滅した。
「リリス! なんだよ今の・・そもそもお前アンデットが苦手じゃなかったのかよ」
「何言っておる、ウニョウニョもぐちゃぐちゃもしていないようなもの苦手なわけないじゃろう。さっきのあれはただのおっさん紳士ではないか」
「まあ、そうだけどよう・・・・」
リリスはグロテスクなものが苦手なだけで、アンデットってジャンルが苦手なわけではなかった。苦手でもないモンスターなど、リリスの相手ではなかったと言う話である。
ポーズのパーティーも、担当のダンジョンをすべて攻略することができた。ニャン太たちが一番心配していたパーティーなだけに、この結果は嬉しいものであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます