ダンジョン・ウォー

第64話 我が家での出来事

俺たちは、少し長い冒険も終わり、愛しの我が家へと帰ってきた。留守番組のポーズ、メタラギ、メイル、グワドンは変わりなく、留守中の収支を見て、俺とリンスは呆然としてしまう。


「・・・・・100万の赤字?」

「なんだあれだ、留守中に、ここへ来たパーティーが二組しかなくてよー、なんだかんだで赤字よ」

「いや、二組でも100万も赤字になるのはおかしいでしょう?」

「いやよう、なんだかんだで、ほら、罠とかよう・・・」

明らかにポーズの様子がおかしい、これはなんか隠してるな。

「グワドン、何か知ってるかい?」

「ポーズ・・・サイコロ賭博ですって・・・・それを取り戻すんだって・・・・トランプ賭博で大負けした」

「馬鹿! グワドンてめー言っちゃダメって言ったろうが!」

「馬鹿はあんたでしょうポーズ!」

「グワドン、ポーズを拘束。リンスとデナトスは折檻の準備。今のうちの100万はでかいから、全力のやつで」

「ぐっ! 放せグワドン! 主、俺が悪かったから・・・ちょっと話を聞け・・・ぬ・・・主!!」


まあ、さすがにこれは折檻だろう。ポーズが連れて行かれた方向から、彼の悲鳴が聞こえ始めた。


紋次郎たちが、アダータイの天然ダンジョンの冒険から帰って次の日。なぜか大部屋に、男衆が集まっていた。そのメンバーは、紋次郎、ポーズ、メタラギ、ソォード、グワドン。一同、神妙な顔で考えていた。


「おい・・主、次から次へと新しいスタッフ連れてきやがって・・・どーすんだよ」

「そうじゃのう・・・これは困ったことじゃぞ、どうするんじゃ紋次郎」

「私もさすがにこればっかりはどうにかしてもらいだいですよ」

「・・・オレ・・・大丈夫・・・」

「そりゃ〜元々グワドンには部屋がねえからじゃねえか」

そうなのだ、実はメンバーが増えたことにより、小部屋が足らなくなってしまったのだ。基本的に女性陣の方が力のある我が家では、男性陣が自分の部屋から追い出され、この大部屋に転がり込んでいた。


「う・・・・ん。困った!」

「困ったじゃねえよ! 阿保主」

「あれですよ、リュヴァちゃんはまだ幼いので、誰かと同じ部屋にしてもらったらどうでしょうか、そうすれば一部屋空きますよね」

「その一部屋は誰の部屋になるんだよ」

「そうですね、それはもちろん私でしょうか」

「なんでそうなるんだよ!」

「私は高貴な生まれですからね、どうしても部屋が欲しいのです」

「知らねえよ」


「ええと、とりあえず女子の誰かに、二人部屋になってもらって・・」

「絶対無理だ、そんなの誰が聞いてくれるんだよ」

「じゃあ、どうすればいいんだよ」

「仕方ねえ・・・部屋を増築するか」

「どこに?」

「屋上が空いてるだろうが」

「あ・・まあ、そのスペースはあるか・・・」

「そうじゃのう、ならばわしの部屋には鍛冶道具が置けるようにしてくれんか」

「そうだ、グワドンの部屋も作ってあげようよ、いつも外とかダンジョンの中で寝てるなんて可哀想だし」

「あの、私の部屋にはシャンデリアをつけてくれませんかね、こんな大きなやつをですね」

「そんなもん付けるかよ。とりあえず、メタラギの鍛冶道具とグワドンの部屋は、ちょっと考えとく」

「オレの・・・部屋・・・できる」

なんだがグワドンがすごく嬉しそうにしている。いつも文句を言わず、何も求めない彼だからわからなかったけど、やっぱり自分の部屋が欲しかったんだね。


それから、男性陣全員で買い物に出かけた。部屋を増築する、資材と道具を購入する為である。


「グワドン、それとそれとあれを二個持ってくれるかい」

「わか・・・た」

かなり大きな資材だけど、グワドンは軽く持ち上げる。やっぱり力持ちだよね。

「おい。メタラギ、これは使えねえか?」

「それはダメじゃ、それより、前の部分が尖ったやつがあるはずじゃ、それが良いぞ」

「ポーズ、ちょっとこれ持ってくれ」

「私はもう持てませんよ」

「何言ってんだよ、まだ背中に担げるだろうがよう」

「重いじゃありませんか!」

「あたりめえだろう。みんな重いんだよ」

全員が手にいっぱいの資材や道具を購入すると、俺たちは帰宅した。その後、近所の裏山に入り、木々を切り出していく。それを木材に加工して、屋上に運び込んだ。


俺たちは、買ってきた資材と木材を使って家の増築を始めた。こんな時は本当にポーズが頼りになる。彼の指示で順調に作業は進んだ。


「あなたたち何やってんの?」

デナトスは作業をしている俺たちに、そう聞いてきた。

「見て分かんねーかよ、部屋作ってんだよ」

「部屋? なんの為に?」

「てめーらに追い出されて、俺たちには今、部屋がねえんだよ」

「あら、そうなの、頑張ってね」

「冷やかしなら声かけんなよ」


そんなポーズの声など無視をして、デナトスは去っていった。


次に、竹で編んだボールを持って、メイルとアスターシアとリュヴァがやってきた。彼女らはそのボールを使って遊び始める。リュヴァが投げたボールが作業をしていたポーズの頭に直撃した。無言でそのボールを持ち上げると、トコトコとメイルたちのところへ歩いて行き、ポーズはすごい怖い顔で注意する。

「ガキども、よそでやれ・・・」


ふわふわとリリスが飛んでくる。そして木を固定して、釘を打っていた俺に、後ろから抱きついてきた。

「わあ! リリス! それはやめろって言ってるだろう。しかも今は作業してるから危ないんだから」

「・・・ごめん」

リリスは少し反省して、すごすごと戻っていく。


「紋次郎様、部屋を作ってるって聞きました、お手伝いします」

「紋次郎さん、私も手伝いますよ」

そう言って、リンスとアルティが屋上に上がってきた。さすがに彼女たちはそういう気配りができる。俺たちは好意に甘えて、手伝いをお願いした。しかし・・


「リンス・・・それ逆だ。ドアノブが変な位置になるだろう? 気がつかねえか?」

「アルティ・・それは床に使う木材だから、変な家具作り始めたらダメだよ」

「リンス・・・それ窓枠だから・・・どうしてそれを椅子にしようと思ったの?」

「アルティ・・・一つの壁に、ドアが三つも並んでついてたら変だと思わねえか?」


そして俺とポーズは一つの決断をする。

「リンス、アルティもう十分だから、下に戻っていいよ」


戦力外通告である。


「おう、やってるか!」

ミュラーナが豪快に現れた。俺たちの作業を見て、彼女はハンマーを握る。

「ちょっと貸してみな」

そう言ってカンコンカンコンと作業を始めた。それがどうだろうか、かなり筋がいい、というか、普通にうまい。そのまま彼女に手伝いをお願いしてみた。


彼女の手伝いのおかげか、増築が完成した。グワドンの広い部屋も作り、メタラギの鍛冶道具が入れれるように、床を強化した部屋も作った。もちろんシャンデリアは作らなかった。














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