第19話 自然保護ダンジョン

皆を集め、休業の話とリンスの話をした。どんな反応をするかと不安だったが、意外にあっけらかんと受け入れられた。

「リンス。そんなことになってるんだったら早く言えよ!」

「本当ですわ。そんな重い問題自分で抱え込んでちゃダメでしょう」

「まーわしらにできることもあるじゃろう。そのなんって言ったかの、フブの結晶石だったかの」

「ブフだよ。メタラギのおじちゃん」

「それを探せばいいのですね。お任せください。私はこう見えて物探しのソーちゃんと呼ばれ・・・」

しかしソーォドの話はそこで止められる。アルティが決定的な一言を発言した為である。

「私知ってますよ。ブフの結晶石の取れる場所」

「エーーーー!!」

「クバラ洞窟でしょう? そこはもう崩壊して無くなったみたいよ」

「いえ。そこじゃない場所でもう一箇所あるんですよ。多分私しか知らないかもしれないですけど」

「うぉーーーー!!」

「さすが、伊達に長生きにしねぇーな! で、どこなんだよ」

「マミュラ洞窟って自然保護ダンジョンです」

また知らない言葉が出てきたぞ。

「自然保護ダンジョンって何ですか?」

「え〜と、そうですよね、そこを説明しないとですね」

「あっ私の方から説明させてきただきます」


そう言ってリンスがダンジョンの種別について説明してくれた。ダンジョンには大きく分けて五つの種類が存在するそうで、うちみたいな個人経営のダンジョンである民営ダンジョン。そしてたまに話の出て来る、誰も所有者がいない天然ダンジョン。それとダンジョンギルドってダンジョン関係のお役所みたいなところが経営している公営ダンジョン。鉱石や素材の採取を平等に冒険者にしてもらう為に、ダンジョンギルドに所有権を制限されている採掘ダンジョン。そしてその美しさや、歴史的保護を目的として、所有を禁止されている自然保護ダンジョンが存在するそうだ。


「なるほど〜よくわかった。さすがリンス、説明がうまいな」

「マミュラ洞窟って確かダルマ山脈の麓だろう。ここからだと2、3日ってとこだな」


ということで、ブフの結晶石の採取パーティーが組まれることになった。メンバーは5人、採掘場所を唯一知ってるアルティ、前衛職であり、鉱物などに詳しいメタラギ、回復役のメイル、本人の希望で志願したリンス、と俺の5人である。


「ちょっと待て、紋次郎は危ねえんじゃねーか」

「そうですね、私もそう思います」

「無理せんでいいぞ紋次郎。採取はわしらに任せておけ」

確かに何の能力もない俺は足手まといと言っていいだろう。しかし何だろう・・リンスの思いみたいなの聞いてしまって、いてもたってもいられないというか・・・

「俺は行くよ! どうしても行きたいんだ」

そんな俺の言葉に、みんな少し呆れ気味に折れてくれた。

「それじゃーあれじゃ、鳴神を装備していけ」

「そうだな。鳴神だけじゃなくて、強力な装備でガチガチに固めればいいんじゃねーか」

「あっ私護符作ります」

「それでは、私は魔道具を用意するわ」

「武器もいるのぉ〜何がいいかのぉ〜やはり短剣じゃろう」


そう言って思い思い、みんな過保護なくらいに俺の装備を用意し始めた。信用されてないのか、それとも単に面白がってるのか・・


「総額2000万ゴルドってところかしら」

「すごい装備じゃの、下手な上級冒険者よりしっかりしとるわい」

「紋次郎様よく聞いてください、装備の説明をします。まず、頭に装備しているサークレットですが、それはエレメンタルスガーと言いまして、マインド耐性、物理耐性、魔法耐性を大幅に上げる優れものです。特にマインド防御は鉄壁で、催眠や混乱などの状態異常系の攻撃をほとんど防いでくれます。鎧は説明が要りませんよね、レーヴェン級の一級品、鳴神です、これだけで冒険者のランクを数段階上げる驚異の装備です。特に雷属性の防御に特化してますので、雷撃攻撃などは完全に吸収してしまいます。そして足に装備しているブーツですが、飛脚という名の魔道具です。走力が増すのはもちろんなのですが、跳躍力が驚異的にアップします」


よくわからないけど、すごい装備だというのはわかった。リンスの説明に続いてデナトスが話を繋げる。

「ここからは私が説明するわ。まず腕の装備だけど、右腕に装備しているのが、シルフィーサーチよ。それは周りの生命体に反応して知らせてくれたり、罠を察知して報せてくれる危険回避の魔道具なの。左腕の装備はアルゴシールド改、メタラギ自慢の衝撃吸収金属のラルドタイトで作られたアルゴシールドに、私が炎と吹雪の防御耐性を付加したものなの。それで大抵の攻撃を防ぐわよ。そして腰につけている短剣だけど、それは閃光丸、魔法剣よ、光の万能属性攻撃ができる汎用性の高い武器なの。でも直接切りつけるのはお勧めできないわ、一振りするだけで光の閃光が放たれ、離れた敵を攻撃できるので、そうやって使って欲しいの」


デナトスの説明が終わると、アルティが小袋を持ってきて、俺に渡す。そして説明を始めた。

「これはアールミリアの護符です。強力な加護効果を持っているお守りです。あらゆる災いから紋次郎さんを守ってくれますので、いつも持ち歩いてくださいね」

「アルティありがとう。みんなもありがとう、俺のわがままで手間かけさせたね」

「本当だぜ、主の装備しているものはどうつもこいつも、たけーんだからなくすんじゃねーぞ」

「紋次郎・・・・オレ・・・心配・・・ついていこうか?」

「グワドンありがとう。でも大丈夫だから、心配しないで」


こうして、なぜか、俺は自然保護ダンジョンである、マミュラ洞窟へと行くことになった。まさか自分でこんな冒険者まがいのことをするとは思ってもみなかったけど、これも経験である、この先のダンジョン運営のヒントになるかもしれないので無駄にはならないであろう。




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