第49話 夏休みⅡ
「花火……ね」
最終的に俺たちが参加することにしたボランティア活動の内容は、花火大会の運営を手伝うというものだった。場所は京都府南丹市で、期間は一泊二日だ。一日目に花火大会の会場設営や観客誘導を行い、二日目には花火大会後のごみ拾いをする予定だ。
「ちょっと遠かったかな」
俺たちは電車で南丹市に向かっているのだが、到着までに二時間ほどかかるのである。
「いいんじゃないかな。遠方の方が合宿って感じがするしね。近場だとテンションが上がらないよ」
晴人のテンションの上下はどうでもいいのだが。
それにしても、花火を見るなんていつぶりだろうか。最後に見たのは、確か――小学生のときだったような。
「花火、楽しみです」
そう言う冬川は本当に楽しみしているようで、見ているこちらまで楽しい気分にさせてくれるような雰囲気を醸し出している。……冬川も花火を見るのは久しぶりなのだろうか。
「みんなが楽しみにしてくれてるならいいかな」
……俺は楽しみだなんて一言も言ってないぞ。楽しみではないとは言わないが。
「それに、私たちの目的はあくまでもボランティアだし」
そうだった。危うく花火のことで頭がいっぱいになるところだった。俺たちの目的は、ボランティアだ。
「ボランティアをするのは初めてだけれど、噂によるといろいろな人たちが参加するらしいじゃないか。面白い人たちがいるといいな」
何気なく放った晴人の言葉――いろいろな人たち。彼女らとの交流が俺たちに大きな影響を及ぼすのだが、このときの俺たちはそんなことなど知る由もなかった。
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