第47話 校外学習XIX
「まさか、田口さんの方が、先に田辺くんを知っていたとはね。意外だったよ」
校外学習から帰ってきた俺たち四人は、今回の相談部の活動について部室で話をしていた。
晴人の言う通りだ。俺も意外だった。
結局、田辺は田口さんに告白をするのはもう少し先にすることにしたらしい。現状を維持したいとのことだった――まあ、それも悪くはないだろう。少なくともあと一年ほどは同じクラスなのだから。変化を起こさないというのも一つの選択だ。
何はともあれ、今回俺たち相談部がサポートしたことは、それほど大きな影響を及ぼさなかったのかもしれない。田口さんは、いずれ田辺に直接お礼を言うつもりだっただろうし、もしかしたら、今回田口さんが校外学習に行きたいと強く主張したのも、頃合いを見計らって田辺にお礼をしたかったからなのかもしれない。
「……俺たちがしたことは、いわゆる余計なお世話というやつだったのかもしれないな」
俺の小さなつぶやきは、窓の外から吹き込んでくる風とともに掻き消える。
その声が他の三人に聞こえていたのかはわからない。
「私たちのサポートで、二人の仲が近くなったと思いたいよね……だって、もし田口さんをあの場所に呼び出していなかったら、田口さんの手紙が書かれることもなかっただろうし、もしかしたら、お互いがお互いに遠慮してしまって、卒業まで何も言えないまま終わってしまっていたのかもしれないから」
秋月の言葉は窓の外から吹き込んでくる風とともに部屋の空気を満たしていった。
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