第34話 校外学習Ⅵ

 ――大きい。

 施設を回り始めて俺が抱いた感情の第一号がこれだ。

 プラネタリウムは地下一階にあったため、この大阪市立科学館の全体像を掴めていなかったが、施設を散策すると、この科学館がとても大きいことが分かる。

 一見、四階建てと聞けば、それほど大きな施設ではないように感じられる。しかし、一階一階のフロアが広いのだ。その広いフロアを活かして、多種多様な展示がなされており、客の琴線に触れる展示がどこかにはあるだろうといった印象を抱かせる。展示を理解するのが難しい子供たちに向けては、サイエンスショーが開かれており、子どもたちも楽しそうに学芸員の科学実験を見つめていた。

 俺の琴線に触れるものはあったのかと聞かれれば、それはもうたくさん、と答えるだろう。小学生の頃に天体の大百科を読んでから、天体の神秘性や壮大さに心惹かれ、今では、自前の望遠鏡で天体観測をすることも時々ある。マニアではなく、趣味人って感じだ――マニアではなく、趣味人。いかにも中途半端なところが俺らしい。

 一人になり、楽しみにしていたプラネタリウムも終わった。俺は改めて、今回依頼された相談について考えを巡らせていた。確か、相談事が持ち込まれたのは――三日前だったな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る