第13話



※若干グロ表現があるかもしれません。お嫌いな方は見ないことをお勧めします。


 湧き水が出ていたおかげで、美味そうなすまし汁が作れそうだ。シャミセンガイのぶつ切りと昆布、海水と湧き水ですまし汁から作る。


 無論マクリについても忘れてはいないのだが、酢の物にしたいけれども酢がない状況というのは結構厳しくないか?


 あぁ、味噌が、味噌が欲しい。醤油が、コメが欲しい。日本の食材というのは邪神かいさんぶつと組み合わせるために生まれてきたような存在ではないか?控えめに言って邪神には悪夢のような食材と言える。


「ダシ汁を濃くとって味付けに使うか…」

「本当に邪神倒すか食うかしかしていないなお前」

「いや、治療もやろうと思ってるけどな」

「でもそれも邪神の卵の駆除だから、広義では邪神倒すってことにはならないか」


 それ言い出したらキリがないだろ包丁。とにかく昆布を湧き水に入れ出汁をとり、マクリを刻んだり、シャミセンガイをぶつ切りにして入れたりして味を確かめる。これは俺は好きな系の味ではあるが、旨味が足りないというやつもいそうだな。昆布を加えたのは正解か。


 適当なお椀も回収してきたから、アフィラムにも食わせよう。まだ寝ているようだな、仕方のない奴だ。シャミセンガイと焼きジャコで昼を済ませ、いよいよ治療に取りかかるとする。


 ……たまたま知ってたから手が出るが、そうでなければただ死ぬのを見ているしかなかったのか。まぁとにかく、この邪神に寝取られた元彼女似の女の子に汁を飲ませないといかん。意識ないんだけど。


 んー…仕方ない。いろいろな意味で気がすすまないが、やるしかない。元彼女似の子の後頭部を持ち上げ、マクリ汁を口に含み、口移しで飲ませる。やっぱ好みじゃないな味だなこれは……。


 何度か口移しで飲ませ、完飲させることに成功した。いやこれ一苦労だからな。むせないように細心の注意を払ってやったし、大変だぞ。


 ひと段落していると、女の子に異変が起きた。いきなり下半身がびくびくし出したと思ったら、下腹部から奴らの卵だったものが流れ落ち始めたのだ!おいおいおいおいビンゴかよ!エグいなこの光景!卵が割れて内容物が飛び出てやがる。眼とかあるんですけど……流石にこれには食欲がわかない。わいたら変態だし、さすがにその趣味はない。


 ふーっ…効果があるかどうかでいうと効果アリだったな。あとは人体への影響だが、こちらについてはまぁほぼないはずである。邪神を倒すには刃物だけでもないってことだ。


 ---


 もう一度、残りの邪神卵を駆除するために引き続き口移ししていたところ、アフィラムが眼を覚ました。


「おお、ようやく目覚めたか。シャミセンガイのすまし汁あるぞ!」

「あ、あ、あなたは何をやってるんですかぁ!!」

「え?あ、あぁこれ。邪神の卵の駆除のために海藻の汁を飲ませてたんだけど」

「わ、わ、私の妻に何をしてたんだぁ!」


 え?何それ聞いてないぞ!


「ちょっと待って、でもお前殺そうとしてたじゃないかこの女の子」

「妻であろうとも邪神の苗床は殺さないといけないんですよ!!」

「本当に殺す必要があるならともかく、方法考えたのかよ」

「ぐっ……」


 この分だと、人間が人間の最大の敵なのはこの世界も一緒かもしれないな。


「それにだ、そもそもお前なんで気絶してたの?」

「え?……まさか……苗床ですらダメなのか……」

「なるほどな、防御機構で邪神の苗床を攻撃しようとしても邪神同様になるってことか」

「そんなことが……」


 どうやら俺はこの世界では相当のイレギュラーらしい。


「つまりだアフィラム、駆除は上手く行きつつはあるようだな、少なくとも」

「で、あなたは何をしてたんです」

「口移しで飲ませてた、マクリ汁を。駆虫薬として使われてたんだ俺らの国で昔」

「はぁ……次から次から、変なこと考えてますね……なんかもういいです」

「……すまん。俺も昔寝取られたことがあるのに、無神経だった。許してくれ」


 その時、女性の目が開いた。気がついたようだ。

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