きぬルート7話 お風呂サービス
立っているのもなんだったから、風呂場にあった椅子に座って、会長が来るのを待っていた。
「…………」
はあ、緊張する。自宅の風呂場じゃないってだけで緊張するのに、会長の風呂場だなんて……。さっきから心臓ドキドキしてるのが、明瞭にわかる。
「鷲宮君、待たせてすまなかった。入ってもいいか?」
「は、はい!」
目を閉じていたため、ドアのカラカラっと開閉する音だけが聞こえてきた。
「寒かっただろう?」
目を閉じている俺の背後から、会長の声が聞こえてくる。
「いえ、そんなことは!」
実際、緊張のせいで気温なんて気にならなかった。
「お湯、かけるよ?」
「お願いします」
首からサーっと、温かいお湯が流される。ちょうど良い温度で心地よい。
「洗うよ?」
「はい!」
ゴシゴシと背中をこすられる。今、どんな状況なんだろう。会長が入ってきてから、目を閉じっぱなしだからわからん。
「大きいな、君の背中。さすが男の子だな」
「そうですか?」
「ああ、たくましい背中だよ」
「ありがとうございます」
あー、背中を洗うために俺の腕を掴んでいる会長の手の感触が気持ちいい。すげースベスベしてて、なんだか――
「あ、やべ……」
「ん、どこか痛かったか?」
「いいえ、ちょうどいいです」
「そうか、では続けるぞ?」
「お願いします~」
この状況で会長に触れられてるせいで、俺の体は正直に反応してしまってる。善意でやってくれてることなのに、こんなん見られたらドン引きされる。
「よし、前を向いてくれ」
「え……前?」
「そうだ、後ろはもう洗い終わった。次は前だよ」
その言葉に驚き、目を開く。
「い、いやいやいや! それはさすがに――」
「気にするでない。ここまできて背中だけ洗うのも、変な気分だ。前を向きたまえ」
「大丈夫ですって! 前は自分でやりますから!」
でないと言葉通り、前を向いている俺の一部分が見られちまう!
「君も男だろう? 覚悟を決めろ」
「ま、待ってくださ――」
「あ、ちょっと、きゃああ!」
会長が俺を強引に前へ向かせたため、滑って尻餅をつく。
「だ、大丈夫ですかって、かいちょおお!」
「ああ、私は平気……あ」
今の衝撃で体に巻いていたであろうバスタオルがはだけてる。かかかか、会長のピンクが――!
「す、すまない、これは――うわああ!」
「って、うおおお!」
急いでバスタオルを巻こうとしたのが災いし、俺を押し倒す形でまたも滑る会長。
「う~ん、すまない、大丈夫か?」
「はい、なんとか……あ」
「……!?」
会長は裸で、俺の上に乗る形で密着している。
「け、怪我はないか?」
「ええ、それは大丈夫です」
「そうか……」
まずいような、得したような。ひとまず、この状態から脱しなければ……。
「…………」
「会長?」
なぜか会長は俺から顔を背け、真っ赤になり、だんまりだ。
「どうかしましたか、会長?」
「その……非常に言いにくいのだが……」
「はい?」
「さきほどから……その……君のが当たっているのだ」
俺のが当たってる? 一体なんのこと――!
「うへえええ!?」
ギンギンになった俺のスティックが、会長の体にダイレクト接触をしてる。
「…………」
まずいぞ、この状況は……。あ、でも少し気持ちいいような……じゃなくって!
「すみません、会長! お、俺――!」
「い、いや、いいのだ。君も立派な男子だ。女の私に欲情するのは至って正常なことだし、仕方がないことだ。 私も初めて故、少々驚いているだけだ」
「俺、もう上がります!」
「あ、鷲宮君――」
俺は会長からすぐさま離れ、風呂場から出て行った。
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