紗智ルート12話 繋がる心と体
あれからどれほどの時間が経っただろう。その間、俺たちはずっと同じ行為をしていた。
「紗智」
「なあに?」
「時間、大丈夫なのか?」
外はすでに暗闇に包まれ、深夜帯に差し掛かっていた。いくら隣の家とはいえ、こんな時間まで帰らなかったら、紗智の両親も心配するだろう。
「大丈夫」
「大丈夫って、でも――」
紗智の抱きしめが強みを帯びる。
「今日ね、お父さんもお母さんも……いないんだ」
「え……」
それって、つまり――
「だから、泊まっていってもいい?」
「ああ、もちろんだ」
言われてみれば、俺の部屋から見える紗智の家は1つの光も放っていない。俺だって、今日はこのまま紗智と過ごしたい。そのことは俺のほうからお願いしたいほどだった。
「誠ちゃん……」
「どうした?」
「お布団、入りたい」
「え……」
「…………」
「いいぞ」
俺と紗智は”仕方なく”お互いの腕を解き、そのまま布団に移動する。
「えへへ、あったかいね」
「ああ」
「昔はよくこうやって、一緒のお布団で寝てたのにね」
「子供の頃はお互いの家にも、よく泊まってたもんな」
「楽しかったね」
「ああ」
「今は、どう?」
「嬉しい、かな」
「えへへ」
紗智が寄ってきたのを感じて、俺も紗智に寄り添い、また抱きしめ合う。
「あたしね、本当は怖かったんだ……」
「怖い?」
「この前はあんなこと言ったけど、それで誠ちゃんに嫌われたんじゃないかって……。そう考えたら、怖くて、怖くて――」
「紗智……」
「だから、誠ちゃんから話があるって言われたときは泣きそうだった。もう終わるんだ、誠ちゃんがいなくなっちゃうんだって――」
「…………」
「あたし、てっきり誠ちゃんはきぬさんが好きなんだろうって、思ってたから」
「どうしてそんなことを?」
「誠ちゃん、きぬさんにだけは態度が違ってたし、それに――」
「…………」
「振替休日のとき、きぬさんが誠ちゃんの家に来てたから」
「!?」
あれ、見られてたのか。
「あれはだな――」
「大丈夫だよ、全部知ってる。次の日、きぬさんに謝られたの」
「会長から?」
「それであたし、知ったんだ。誠ちゃんがお料理やお洗濯してるの」
「全然、出来なかったけどな」
「ううん、誠ちゃんは頑張ってるよ。それなのに、あたしは誠ちゃんを傷つけてしまったんだって、そう考えたら、誠ちゃんに顔向けできなくて――」
「そんなことない。俺が紗智を今まで傷つけてきたんだ。だから、これは俺の責任なんだ。紗智はなにも悪くない」
「誠ちゃん……」
「そんなに悲しい顔しないでくれ。俺は紗智が楽しそうにしてるときの顔が好きなんだ」
「ありがとう、誠ちゃん」
「紗智……」
「んっ……」
ついさっきまで何回も行った行為をまた繰り返す。何度やってもこの感触は新鮮だ。
「誠ちゃん……」
「ん?」
「あたし、今、すごくドキドキしてるよ」
「え……」
「…………」
紗智は俺の手を取り、そのまま自分の胸に導く。
「紗智……」
「ほら、感じる? とくんとくん、って」
「ああ、わかるよ」
紗智の鼓動が振動となって、俺の手のひらに伝わってくる。早く脈動しているそれとともに、紗智の体温までもが明瞭にわかる。
「……して」
「え……」
「あたし、誠ちゃんと……」
「……いいのか?」
「うん……」
「紗智……」
「はあ、はあ、誠ちゃん……」
繋がったままの状態で紗智は息も絶え絶えに俺に問いかける。
「どうした?」
「あたし、幸せだよ」
「俺もだ」
「んむっ……」
もう何度目かもわからないキスをする。
「誠ちゃん……大好き!」
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