ONE続編 百年後の邂逅

作者 如月ふあ

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★★★ Excellent!!!

 ONE 「たったひとつの」の続編で、百年前の予言の結実のお話です。
 予言を叶える者、ふたつの星の争いを調停する者として生まれついた特殊能力者のカツミは、子供のころから人間が不確かで移ろいゆく、闇を抱えた存在であることに直面せざるをえなかった。それでもカツミは周囲の人々の愛情や思いを受けて、自分の運命と対峙していきます。
 お話のなかにさまざまな対比が出て来ます。光と闇、一瞬と永遠、花びらと宇宙の連関。ひとりの心の動きや揺らぎが宇宙と繋がっていること。
 透明な鏡であるカツミは、ひとりでは予言を結実させることができなかった。透明な鏡は透明な闇を必要とします。純粋でなければ受け入れない生命体の助けを受けて、カツミは人々の心を変えていきます。閉じていなければ生きていけなかった自分の心も。
 失われていた欠片に出会うことで、カツミは世界を受け入れたのかもしれません。
 そして、透明な物語の世界を旅したあとで振り返ると、ふと自分が濁った闇のなかにいることに気づかされます。

★★★ Excellent!!!

前作「ONE」の続編、あの日少年だったカツミたちの物語。
登場人物らの心境表現も素晴らしいですが、唐突な展開の入れ方や細かい描写などについても目を見張るものがありました。
作中で何度も登場人物たちが、自分たちの宿命について考えさせられます。私の知っている物語には「過去の運命が何だ」とばかりに真っ向から立ち向かうものが多いですが、この作品は違います。そして気付かされたことは、運命に従うにしろ歯向かうにしろ、それは戦いであるということです。
それと個性が強すぎる登場人物の多いなかで、いつの間にか感情移入して楽しんでいる自分がいました。面白かったです。

★★★ Excellent!!!

百年戦争を続ける国にある「特区」
そこでしか生きる事ができないA級能力者のカツミと彼を取り巻く人々の葛藤や、失望、そして恋愛を描いた物語。

僕は個人的に如月ふあさんという人は、このカクヨムの中でもトップ10に入る書き手だと思っています。特にその人物の心理描写は、他の追随を許しません。とにかく表現の一言一言が勉強になります。

さあ皆さんも如月ワールドに触発されてください。

★★★ Excellent!!!

物語るという行為は、かくも力強い行為になりうるのか。

読了して思うことは、言葉というものが思いを載せる箱であるということと、美しく綴られた言葉には祝福が宿るということだ。

キャラクターの心理に深く入り込む際の、微に入り細を穿つ描写。
神の視座に立つ際の、大胆にして深遠な言葉選び。
物語世界を空気のように満たす、詩的で流麗な文章。

作者様が、生半可なエンタメを目指しているのではないことは、読めばすぐに分かるだろう。これは、アートだ。

アートとして紡がれた祝福は、キャラクターの枠を超え、物語の枠を超え、読者の精神にさえも革命をもたらす。冗談ではなく、世界が変わる。ド派手な演出もないのに、ただ静かに、変わる。気づくと、変わっている自分がいる。そして、戻らない。それが心地よい。

自己という、ただその一点が変わることで、世界は変わるのだ。

★★★ Excellent!!!

 この作品のレヴューを書くことを、我慢できなかった。それくらい印象深く、素晴らしい作品だ。タグには「ボーイズラブ」とあるが、けして「やおい」と呼ばれるものではない。確かにボーイズラブ的な要素はあるが、それにも増して、青年の成長という要素が強い。そして青年の成長が周りの人々に深く影響を与えている。そこにあるのは軋轢、苦悩、葛藤など、人間の感情の根源にあるものである。これらの言葉では言い表せない部分を、この作者様は見事に書ききっている。
 人生における哲学的で、示唆的な暗示などが終始ちりばめられた文章だが、人間の成長物語として重くなり過ぎずに拝読することができた。純粋なのに、どこか小悪魔的な主人公と、それを取り巻く人々の間に流れる感情には、思わず胸を締め付けられる思いがした。それくらい血の通った文章である。それなのに、ページをめくる手が全く止まらない。作者様の力量と、何より作品に対する真摯で情熱的なまでの愛情が成せる技だろう。
 美しい登場人物たち。そして美しい表現。美しい佇まい。この宝石をちりばめながらも人生的・世界観的文章哲学を作品として書けるのは、この作者様だけだろう。
 まずは何の先入観も持たずに、1話読んでみてほしい。きっとこの作品の虜になること間違いなしだ。