第152話 ヤシャルリア達の世界(6)S☆3

「今、200人と言ったか?」


 俺はヤサウェイの言葉を確認するように訊ねた。

 もし、今さっきの彼の言葉が間違いでないなら、俺と境遇を同じくする者が他にも大勢いることになる。

 だが。


「ああ、200人だ。だが、生きてお前と境遇を同じくする者はおらんぞ」


 ヤサウェイが答えるより早く、ヤシャルリアが俺の考えを見越したかのように口を挿んだ。


「召喚の儀が執り行われた日。我々がそれを妨害したからな」

「妨、害?」


 眉根をひそめる俺に、ヤシャルリアは「当然だろう?」と聞かせる。


「敵が脅威となる兵力を異界から召喚しようというのだ。黙認するは私ではない」


 当然のような顔をして、彼女は言った。

 その言い草に、俺は腹の底から静かに怒りが湧き上がって来る。

 当然だろう。

 ああ、当然だとも。

 奴は俺にこう言った。

 『生きて俺と境遇を同じくする者はいない』と。

 『自分達が妨害したのだ』と。


 それはつまり――


「ヤシャルリア……お前は、その200人をどうしたっ。生きてはいないと言ったな」


 ――奴が、殺したということだろう。


 200人か、それに近い人々を。

 しかし。


「猛るな。私は人殺しではあるが、殺戮者ではない」

「なんだとっ」

「貴様の瞳は、私を殺戮者だと言っているぞ?」


 ヤシャルリアは俺とは対照的に平静を保ちながら続けた。


「言ったろう。我々は召喚を妨害したのだ。殺す以前に我々はその200人と相対してすらいない。ただ、命を失わせることに関わったことは否定しないがな」


 すると、そこでヤシャウェイが再び口を挿む。


「ヤシャルリア。下手にタケを逆なでする言い方はよせ。君が将として恥じ入る行動をしていないと言うなら尚更だ」


 ヤシャルリアは一度ヤサウェイに目をやり、面白くなさそうな顔をした。


「素顔を晒した途端おしゃべりになったな、お前は」

「当然だ。気に入らないと言うなら、僕は君との決着を早めることになるが?」

「わかった。わかったからもうよせ。貴様の言葉は気に障る」


 ヤシャルリアは溜息を吐くと俺に向き直る。

 それから、彼女は言葉を選ぶようにひとつの間を置いて口を開いた。

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