第151話 ヤシャルリア達の世界(5)S☆2
ヤシャルリアはパタンと読んでいた本を閉じ、少しの間沈黙した。
「順を追って話すとして……おそらく魔導に関心のない者には理解し辛い話も出てくるだろうが、その点はそこの魔導士の女に後で補完してもらうと良い」
彼女は目線をメルクオーテへと向け「問題あるまい?」と訊ねる。
メルクオーテがこくりと頷くのを見届けると、ヤシャルリアは語り出した。
「では……まず、タケ。貴様が異世界を渡るようになった原因について話しておこうか。と言っても、魔導士を連れ、この世界に来ているのだ。貴様を縛るその世界への揺らぎが何なのか。察しはついているのだろうな?」
彼女の視線が俺へと移る。
「ああ。これは転移じゃなく、召喚の類だと聞いた」
「然り。そして貴様が知りたいのは、誰が、なんの目的で貴様を召喚しようとしたか、だな?」
そのヤシャルリアの問い方は、大方つけていた俺の予想に一握りの疑問をつかませた。
「まさか……お前じゃないのか?」
すると、ヤシャルリアはやわらかに微笑み「察しがいいではないか」と返す。
「その通りだ。最初、貴様をこの地へ召喚しようとしたのは私ではない。私と敵対する者達だ。用途はそうだな……奴隷――いや、従属させるための戦士と言った方が適切かもしれん」
「戦士?」
「ああ。連中は探していたのだ。強く。だが魔導は使えず、自分達が支配しやすい兵力をな」
直後、ヤシャルリアの言葉を補完するようにヤサウェイが口を挿んだ。
「タケ……君には他の者にない力があったろう? いや、正しくは他の世界の者にはない力だ」
彼の質問で真っ先に思い浮かんだ答えは――。
「俺の馬鹿力か?」
異世界に来た途端覚醒したとでも言わんばかりの怪力。
それ以外に思い浮かばなかった。
「そうだ。タケ、君は――いや、君達の世界の人間は僕達よりも余程強い腕力を持っている。だが、魔導は使えない。ヤシャルリアと敵対する者達は、だから目をつけこの世界に200人の異世界人を召喚しようとした、ヤシャルリア達の操る屍と、兵士達を蹂躙するためにね」
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