第148話 ヤシャルリア達の世界(2)S☆1
メルクオーテは果物をつまみだすと、自棄を起こしたように止まらなくなり。
「め、メルメル? 元気になった?」
黙々とひたすら果実を飲み込み咀嚼していく姿に俺達は、必要以上に神経を使っていた。
だが。
「まぁ、元気にはなってないけどね……ただ落ち込んでばかりもいられないって言うか……また『あーん』されるのも堪らないっていうか」
むぐむぐと口を動かしながら、飲み込む度にメルクオーテは短く言葉を告げていく。
しかし。
「今一番落ちてる理由は魔導がすっかり使えなくなっちゃったことよ……あと……」
はぁ……とため息をつくなり、彼女は指先で皿の上の果実をつついていじけた。
「これは良いことなのかもしれないけど……あんたが多少前向きになったこと」
「俺?」
「そっ……」
メルクオーテの指先がピッと俺を指差した後、また次の果実を口に放り込んでいく。
「そりゃ、良いことかもしれないけどさ……あのヤサウェイって男に、影響されすぎじゃない?」
彼女の指摘は、俺に言葉を詰まらせた。
その後、メルクオーテはぷくりと頬を膨らませる。
「むぅ……まあ、別にいいんだけどね」
俺はサクラと顔を見合わせながら、なんと答えたものかと逡巡した。
すると。
「よっぽど、信頼してたのね」
俺が言葉を選ぶ間に、メルクオーテの声が先に耳に届けられる。
だが、その言葉が、ほとんど彼女に対する返答になってしまった。
「ああ。そうだな……あいつは、俺にとって恩人なんだ」
その時。
コンコンと、部屋の戸がノックされる。
「あ。はーい! どうぞー」
サクラが元気よく返事をすると、扉が開き。
「やあ、朝食は済んだか?」
ヤサウェイが顔を見せた。
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