旅立ちの日-準備万端-

第113話 123回14日目S★1

 旅立ちの間際。中身の最終確認を終え、俺はリュックを背負う。

 右手にはメルクオーテが用意してくれた魔導金属製の杖を握り、準備万端といった所だった。


「さ。準備はいいかしら?」


 サクラがリュックを背負い終ったのを見て、メルクオーテが訊ねる。

 すると、サクラは両手を握りしめて構え「私はいつでもいいよ」と即答した。

 彼女の拳には黒いグローブがはめられていて、また、胸にも簡素だが皮鎧がつけられている。

 上からローブをまとわせれば、冒険者姿がなんとも様になっていた。


 それこそ、これで弓を持たせれば……なんてつまらないことを考えてしまうくらいに。


「よし。で、タケは?」


 そして、俺へと振り向くメルクオーテも、工房に引きこもっていた時とは装いが違っていた。

サクラのように皮鎧はつけていないが、肩からポシェットを下げ、収納の多い腰カバンをしている。

服も布地が厚ぼったくなく、装飾も少なめで今の彼女を見ても魔導士という印象は薄い。

 上からローブを着せてみても、どことなくガールスカウトという感じがした。


 そんな動きやすそうな恰好のメルクオーテに、俺もサクラと同じように答える。


「ああ。いつでもいけるぞ」


 その途端、彼女はにやりと笑って、右手にチョークのような筆記用具を取り出した。

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