第109話 123回12日目〈2〉S★1
しかし、俺は彼女の言ったことを、簡単に飲み込むことができない。
「本当に、そこまでできるのか?」
メルクオーテを信用していない訳ではなかった。
ただ、これまで散々振り回されてきた力の手綱を、こうも簡単に握れるのかと思ったのだ。
だが、怪訝な顔で訊ねる俺に、メルクオーテは「当然よ。アタシ優秀だもの」と即答する。
すると、メルクオーテの話を聞いて、サクラは「すごい! すごいね!」とはしゃぎだした。
「じゃあ、これからタケは、自由にどこにでも転移できるの?」
サクラはキラキラと瞳を輝かせ、嬉しそうにメルクオーテに訊ねる。
が、メルクオーテは急に「あー……」と低い声を伸ばし「えっとね」と言っ切り出した。
「確かに、行きたい場所へ、行きたい人と、行きたい時に行けるようにはなるけど、まるっきり自由って訳にはいかないのよ」
彼女が答えた途端、サクラはぱちくりと瞳を瞬かせて首を傾げる。
「どういうこと?」
「簡単にいうと、誰か……というより、アタシの協力が必要ってことよ」
そう言って、メルクオーテはサクラの髪を撫で、改めて説明を始めた。
「タケの転移能力は元々、大きな召喚術式だったでしょ。で、今それは召喚者がおらず、召喚先も全くのランダムな状態で発動するようになってる。アタシはね、その術式の召喚者をアタシ、メルクオーテに。そして、召喚先と召喚対象をアタシの任意の場所に設定できるよう術式を書き換えるつもりなの……いや、召喚対象というよりは召喚範囲の書き換えかな? あんたと接触してる人間も召喚対象に含むよう書き換えるつもりだし……」
ぶつぶつと呟いた後、彼女は「簡単でしょ?」と、俺達に微笑む……。
「つまり、俺の転移の力はこれまでみたいな、いつ発動してどこに飛ばされるかわからないものから、発動のタイミングや場所。それから連れて行ける人数まで君が管理できるようになるってことか?」
メルクオーテは「うーん」と唸って指先を口に添えた後「まあ、そんな感じかな」と頷いた。
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