第88話 123回10日目〈18〉S★1

「というか本来ならね、一度目の召喚が失敗した時点で終る筈だったの。けど、タケには二度目以降も召喚術式が発動した。それはなぜか? ここでタケの術式が大規模だったというのが重要になるわ」


 サクラから離れ、メルクオーテは筆記用具を拾い上げると黒板に幾何学的な模様を書き出し始める。


「古い大規模魔導術式は、小さな術式の集合体である場合が多いの。つまり、タケを召喚した召喚術式の他に、独立した召喚術式が100から200ほど繋がっていたか何らかの形でまとめられていたと考えられる。そして、これらの集合体である召喚魔導術式は発動したものの、召喚を完了せず妨害されてしまった。その結果、術式は崩壊。ただ、各個独立していた幾つかの術式は発動した後も生き残ったのよ。発動しなかった他の術式に与えられる筈だった大量の魔力を持ってね!」


「すまん! メルクオーテ、もっと簡単に頼む!」


「つまり! 最初に与えられた魔力を消費し切るまでの間。召喚主を求めてランダムに発動を繰り返す自律式の転移術式ができてしまったのよ!」


 簡潔に言い切ったメルクオーテは、なんともいい顔をしていた。


「ということは……いつか俺は、そのあらかじめ蓄えてた分の魔力がなくなれば、転移しない体になるのか?」

「そうね。と、答えてあげたいけど、たぶん違うわ。おそらく、最初に与えられた魔力はもう使い果たしてる筈だもの」

「じゃあ、どうやってタケの魔導術式さんは次の世界に飛ぶの?」

「それなんだけどね。たぶんそこを解決するのは、今までタケが口にして来たモノだと思うのよ」


 メルクオーテはまた筆記用具を放ると、サクラが抱えていたバスケットからサンドイッチを取り出す。

 その後、彼女は作ったサンドイッチを分解し、その具材をいろいろ手の上に広げ、俺達に解説しだした。

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