解説はランチをほっぽりだして-熱弁-
第87話 123回10日目〈17〉S★1
メルクオーテを追いかける俺の後ろに、バスケットを両手で抱えたサクラが続く。
「メルクオーテ! 何かわかったのかっ?」
「ばかね! わかったなんてもんじゃないわ! 完全理解よ!」
「それって、私のおかげっ?」
「かなりねっ」
メルクオーテは工房に戻ると、彼女が研究室と呼んでいる場所に入った。
部屋の中が本だらけなことはどこの部屋も共通なのだが、ここには大きな黒板がある。
彼女は部屋に入るなり本を数冊取り出し、筆記用具を手にページをめくりながら黒板へ文字を刻み始めた。
「アンタの転移で確かだったことは『摂食による発動』よ。けど、一回目は違った筈。と言うか、違うと助かる。あんたは最初一回目。確実に召喚術式によって異界に来た。でも、召喚された場所は、召喚者の意思とは違う場所だったの! 何故だと思うっ?」
「何故って……?」
「失敗したから?」
「惜しいっ」
俺とは違い、直感で答えるサクラに、メルクオーテは振り返り上機嫌で答える。
「正解は、妨害されたからよ! あんたの召喚主は大規模な召喚術式を使った。それも一人や二人を呼び出すものじゃなく百人、二百人って単位で呼び出すものをね。だから、あんたに使われた術式はあんなにも大きく、細かい。けど、召喚する最中、あるいは直後に妨害されてしまったの。だから、正しい世界に召喚されなかった」
俺やサクラを気にする様子もなく、彼女は説明を続ける。
すると、俺の頭は要領は得なまま、次々と疑問だけが蓄積されていった。
「誰が妨害したんだ?」
「知らないっ」
「タケ以外の召喚された人はどこに行ったの?」
「わかんない♪」
「一度間違った世界に召喚されたのに、なぜ別の世界にまた召喚されたんだ?」
「良い質問ね!」
メルクオーテはぱちんと指を鳴らす。
こんなにテンションの高い彼女は初めて見た。
「召喚術式は元々、強制転移と主従契約の二種類の魔導を基礎に構成された魔術だと言われているわ! つまり、召喚主が『何か』を召喚し、召喚されたものと主従契約を結ぶまでが一つなのよ!」
と、言われても……。
頭の上に疑問符を浮かべていると、サクラがポツリとこぼす。
「もしかして、タケが異世界に召喚された時、目の前にタケを召喚した人がいて、その人と主従契約を結ばないと、ずっと……終わらないの?」
「そう! だいたいそんな感じ! えらいぞ! サクラッ!」
メルクオーテは手に握っていた筆記用具をぽいっと放ると、サクラの髪をくしゃくしゃと撫でだした。
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