謎の地下闘技場

「この神聖なるグランドでの乱闘は許さんぬ!やるなら地下で思いっきり殺り合うがいいぬ!」


塗呂オーナーは実質上、千葉ヤンキースの監督とも言える存在だ。


ヤンキースの監督は田中 良一(たなか りょういち)という人物が指揮をしているが、塗呂がベンチから伝令しており、その采配が的中してる為、田中はただの置物と化している。


守山も塗呂には全幅の信頼を寄せており、守山を唯一コントロールできる人物なのだ。


「まさか、地下闘技場で?」

守山が驚いたように声を上げた。


「何や、地下って?ここ地下あるんか?」


八幡は何がなんだか解らない様子だ。


「ブヒョヒョヒョヒョ、あの場所なら誰も何も言わないぬ!さぁバトルを開始するがいいぬ!」


守山と八幡は塗呂の後に続きベンチを出て地下に繋がる階段を降りた。


「何や、ここは?何で球場の地下にこんな場所があんねん!」


八幡が驚くのも無理はない。


その場所は、地下闘技場と言われ、壁には仁王像がそびえ立ち、ロウソクの火の灯だけの薄暗い空間だった。


この地下闘技場という場所は、選手の修行の場でもあり、若手選手が血と汗を流す苦行の部屋でもあるのだ。


「ブヒョヒョヒョヒョ、二人にこのバットを渡そう」


塗呂が二人に渡したバットには、あらゆる箇所に五寸釘が打ち込まれていた。


「これで存分に殺り合うがいいぬ!ブヒョヒョヒョヒョ」


塗呂の高笑いが響く。


試合前に釘の打ち込まれバットで闘えというのか。


「何やこのけったいなバットは?バットはこんな事に使うもんやないわい!」


八幡は道具を大事にする。


バットに釘を打ち込むなんて、とても考えられない。


「テメー!バーチーの文句はオレに言え!!と言ったろうが!オーナーに説教垂れてんじゃねぇぞ、コラっ!」


守山が襲いかかる。


八幡はバットを持たず、守山の懐に入り、さば折りを極めた。


「ぐぉっ…」

苦悶の表情を浮かべる守山。


「早よ、参ったせい!参った言わんのなら背骨折ったる!」

八幡の締める力が更に増した。


「ぐぅおぉ~っ!!」


守山は締められながらも上体を反らし、勢いをつけて頭突きをかました。


(ガッツーン!)


「グッ!!」


八幡がさば折りを解き、額を押さえた。


頭突き1発で八幡の額が割れ鮮血が滴り落ちた。


守山の額からも流血している。


「このクソガキがっ!」


守山はエルボーを叩き込む。


八幡がふっ飛んだ。


そして無理矢理引きずり起こしフロントフェイスロックで八幡の首を極めた。


「ンググッ…」


八幡が苦痛の声を上げる。


「ギブアップしねぇと首の骨イッちまうぞ、オラッ!」


守山は更に締め上げる。


「うぉぉ~っ!!」


八幡は首を極められながらも守山を抱え上げ、フロントスープレックスのように後方に投げた。


「ぐぁっ!!」


と背中をしたたかに打ち付けられ守山は悶絶している。


八幡も首を極められたダメージでダウンした。


「ブヒョヒョヒョヒョ、どうやら両者KOらしいぬ。この勝負引き分けだぬ!リベンジマッチは何時でも構わないぬ!」


塗呂の裁定で勝負は引き分けに終わった。


そして二人とも頭に包帯を巻きながら試合に出場し八幡、守山のアベックホーマーで快勝した。


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