天才たる所以
ガンズとの初戦は雨天により中止と発表された。
ヤマオカは部屋でボンバーズ対ヤンキースの2位争いを観戦していた。
試合は八幡のホームランで先制したが、陳のタイムリー、守山のホームランで逆転。
しかし九回の裏、ワンナウト、ランナー一塁三塁の場面で、ボンバーズの3番柏木がタイムリーヒットを打ち同点とする。続く4番八幡をヤンキースは敬遠。
5番ブルーザーの打席でヤンキースバッテリーはまさかのパスボール。
ランナーが生還してボンバーズのサヨナラ勝ちという呆気ない幕切れとなる。
「ヤツラは接戦になると弱いな…」
ヤマオカがボソッと言ったようにヤンキースは接戦での勝率は2割にも満たない。
打って打って打ちまくって相手を叩きのめす大味な野球なだけに、接戦となると脆くなる。
後半戦凄まじい勢いで一時は首位に立ったヤンキースだが、粘り強さに欠けていた。
やはり用心するチームはボンバーズといったところか。
翌日は天候に恵まれ、関門海峡を見渡せるオクトパスフィールド。
ガンズの選手がホームランを打つとレフトスタンドに設置している噴水から水柱が出るようになっている。
この天然芝の球場は左右非対称になっており、左中間が広く、右中間がやや狭い。
しかしライトスタンドには高さ10.5㍍あるフェンスの為、左バッターがホームランを打つ為には弾道の高い打球が必要となる。
通称【モンスターウォール】と呼ばれている。
そして今日の先発が発表された。
エンペラーズは榊、ガンズは真中という両左腕でスタートする。
左のアンダースロー真中に前回苦戦を強いられたエンペラーズに策はあるのか。
1番スイッチヒッターの大和が右打席に入る。
真中の第一球は低めギリギリのストレートが決まり、ストライクを獲る。
二球目は内角からボールになるスライダーを当てるが三塁側に切れるファール。
三球目、外角に逃げるシンカーを見送りワンボール。
テンポよく四球目を投げた。
内角高めの浮き上がるストレート。
大和は思わずバットが出てしまい空振りの三振に倒れた。
まずはワンナウト。
続いて2番櫻井が左打席に入る。
いまだ左バッターからホームランを打たれていない真中。
いずれ真中からホームランを打つだろうと言われている天才櫻井。
注目の対決だ。
真中は初球インコース低めにストレートを投げる。
「ボール!」
櫻井は微動だにしない。
続いて二球目は外に逃げるスライダー。
「ボール!」
櫻井は手を出さない。
今日の真中の球のキレは良いみたいだ。
しかし櫻井はボール球には手を出さない。
これが櫻井の出塁率の高さの証でもある。
ボール球に手を出さず四球を選ぶ。塁に出る事は安打と同じ意味を持つ。
ガンズが掲げるセイバーメトリクスの申し子が櫻井なのだ。
真中は三球目を投げた。
真ん中やや外側のストレート。
櫻井は自然体のままスムーズにバットを振り抜いた。
打球は弧を描きライトスタンドのモンスターウォールを越えるホームラン!
早くもエンペラーズが先制した。
そして真中から初のホームランを打った左バッターでもある。
悠々とベースを回りホームイン。
エンペラーズが幸先よく先制した。
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