フロントドア
ガンズとの三連戦が始まっ。高峰は初回を三者凡退の好スタートで終えた。
二回の表の攻撃、四番 高梨、五番 垣原と倒れツーアウト、打席には六番の松浦。
類いまれなる体格と200㎏を越える背筋力が持ち味の将来のスラッガーだが、ガンズ先発の真中の変化球の前に空振り三振。
エンペラーズも三者凡退に終わる。
そして二回の裏、ボボズの攻撃は四番の廣永から。
高峰はストレートを主体に攻めのピッチングをする。
廣永に投じた四球目は155㎞を記録。
カウントはスリーボール、ワンストライク。
そして五球目に投じたインコースのツーシームがやや甘く入り、廣永はそれを見逃さず弾き返した。
打球はライト線ギリギリに入るフェア。
廣永が俊足を飛ばし二塁を駆け抜け三塁に向かう。
クッションボールを取ったトーマスJr.が自慢の肩で三塁ベースめがけレーザービーム。
三塁手高梨がタッチをしたが、廣永が一瞬早くセーフ。
ノーアウト、ランナー三塁というピンチ。
捕手の木下と内野陣、ヘッドコーチ佐久間がマウンドへ向かう。
「まだ二回だ。圭右、逃げずに攻めろ。一点ぐらいは構わん」
佐久間が激を飛ばす。
内野陣はバックホームに備え前進守備だ。
高峰はこれからエースとしてクンニーズを牽引していかなければならない。
このようなピンチはこの先もあるだろう。
ここで逃げずに勝負する。
次は五番の熊野(くまの)が左打席にはいる。
今シーズンは3本のホームランを放ち、打点は12でトップだ。
木下の出すサインに頷く。
まずは牽制球を投げる。
廣永は素早くベースに戻る。
そして第一球はインコースからストライクゾーンに入るツーシーム、いわゆるフロントドアという投球術だ。
メジャーではよくある投球術だが、日本ではあまり見かけない。
「ストライク!」
熊谷は一瞬「えっ?(ストライクゾーンに)入ってる?」
という顔を主審に向けた。
勿論、判定は覆らない。
高峰は今年のキャンプから、フロントドア、バックドアの制球に磨きをかけた。
バックドアとは、外角からストライクゾーンに入る変化球だ。
フォーシームとは縫い目の向きを表し、ボールが1周スピンする間に縫い目 (seam) の線が4回 (four) 通過し、マグヌス効果による揚力をより効果的に得られるとされる。
ツーシーム・ファストボールはボールを1周する間に縫い目 (seam) の線が2回 (two) 通過する向きで投じられた球である。
バッターの手元で微妙に変化をするので、内野ゴロを打たせるには効果のある球だ。
熊谷はこの見慣れない変化球に戸惑い最後はスプリットで空振りの三振を喫する。
まずは1人アウトに出来た。
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