榊VSトーマス

ヤマオカはニヤっと笑った。


「勝負?あぁなんでもやってやるぜ」


榊は自信満々だ。


「Sure(望むところだ)」


トーマスJr.も異論はないようだ。


「よし、解った!その代わり今日で必ず決着をつけろ。それでもまだ揉めるようなら二人共ファーム行きだ」


ヤマオカは二人に試合形式を伝えた。



二人は了承し、監督室を出た。


しばらくして垣原が監督室に入ってきた。


「監督、これでよかったんですかね?」


「まぁ、何とかなるだろ。次の手は打ってある」


ヤマオカは垣原の肩をポンポンと叩き、監督室を出た。



グランドに現れたヤマオカは、坂本ヘッドコーチとキャプテンの高梨を呼んだ。


「えぇ~っ!マジっすか?」


「監督!いくらなんでもそれは…」


坂本も高梨も大丈夫なんだろうかという顔をしていた。


「大丈夫だ。これで決着をつけさせる」


「まぁ監督がそう言うなら…」


坂本が渋々ながら監督の意見に従った。


「お~いっ!今から一時練習中断だっ!ゲージどけてくれ!それと皆はファールゾーンまで下がってくれ!」


高梨は練習していた選手達に今すぐ中断するよう叫んだ。


一体何だろう?という顔をしながら選手達は練習を止めた。

そして、報道陣をシャットアウトした。


マウンドのプレート上にはヤマオカがいる。


ユニフォームの首元にピンマイクを付けていた。


「只今より、時間無制限一本勝負を始めます!」


「何だって~っ?」


「時間無制限って何だ?」



選手達はざわめく。


「一塁側ベンチより、ウェイン・トーマスJr.選手の入場ですっ!」


ヤマオカがリングアナウンサーさながらの声で一塁側を指した。


「何だ、何だ?」


一塁側ベンチからトーマスJr.が現れマウンドに向かった。


「三塁側ベンチより、榊 恭輔選手の入場ですっ!」


すると三塁側から榊が登場し、マウンドに向かう。


榊とトーマスJr.がマウンド上で向かい合う。


「一塁側ベンチ、194㌢ 100㌔、ウェイン・トーマスJr.~っ!」


ヤマオカはリングアナウンサーをやっている。


「三塁側ベンチ、183㌢ 82㌔、榊 恭輔~っ!」



「高梨さん!どういう事ですか、これは?あの二人何やるんですか?」


櫻井が慌てながら高梨に聞いた。


「あれが完全決着の方法らしい…」


高梨は呆然としながら櫻井に答えた。


「レフェリー、ナダウ・ヤマオカ」


「監督自分で自分のコールしてるよ…」


坂本が呆れながら呟いた。


選手やコーチ、裏方の人達はファールゾーンでただ立ち尽くすのみだ。


「なぁ、このチームってこんな事ばっかやってんのか?」


大和が何が何だか意味が解らないという感じで櫻井に聞いた。


「いや、こんな事前代未聞ですよ!止めさせないと!」


櫻井は止めに入ろうとするが、高梨が阻止した。


「大翔(ヒロト)、ここは監督の言う通りに従おう」


止めるだけムダだ、と高梨は櫻井に言った。


そして榊とトーマスJr.の両手にはオープンフィンガーグローブが装着されてる。


「スパイクは危険だ。二人とも裸足になれ」


ヤマオカは榊とトーマスJr.に裸足になるよう伝えた。


「いいか、どっちかがギブアップ KOするまで試合続行だ。目潰し、噛みつき、急所攻撃は反則だ、わかったな!」


(ヤツラ、プロレスでもおっ始めるのか!?これから試合始まるんだぞ!!)


選手達の心配をよそに、勝負が始まった。


そしてこの様子をスタンドから見守る二人がいた。







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