ノーヒット

「Next Butter, No.44 RF Wayne Thomas Jr.(4番 ライト トーマスJr.背番号44)」


アナウンスのコールでトーマスが右打席に入る。


スイッチヒッターの彼は相手ピッチャーの山崎が左投げだから右打席に入る。


稀に左ピッチャー相手でも左打席に入るスイッチヒッターもいる。


初球はインコースに入るストレート「ストライク!」


「 The sharpness of the straight pitch is great(キレのある球だ)」


トーマスは山崎のストレートがかなり良いと判断した。


スピードガンは142㎞を標準したが、打席ではそれ以上に速く感じる。


2球目はアウトコースに外れたスライダー。


「ボール!」


櫻井にホームランを打たれたがそれほど気落ちはしていない。


香坂がサインを出す。


(いくら調子が良くないとはいえ、ストレートで押したらスタンドに持っていかれる)


香坂は変化球を交え配球を組み立てる。


続いてインコース低めに少し外した直球を投げた。


「ボール!」


カウントは2ボール 1ストライク。


まだ1度もバットを振ってない。


4球目、今のコースから球1個分内側入るスライダーを投げた。


ガシッ


トーマスがスイングしたが、打球はファースト側にボテボテと転がる。


「ファール!」


ラインを越えなかったらファーストゴロでアウトになっていたところだ。


たちまち2ストライクと追い込んだ。


徹底したインコース攻めだ。


サインをだす香坂。うなづく山崎。


5球目はインコース高めののけ反るようなストレートを投げた。


「ボール!」


フルカウントになり6球目を投げた。


アウトコースだ!トーマスは狙ったとばかりにバットを振る。


しかし手元で外側に逃げるように沈む球に空振り。


「strike out!」


山崎の決め球であるスクリューボールに三振を喫した。


これでオープン戦10打数0安打。


まだまだヒットを打ち日が遠い。


「何だまた三振かよ、メジャーの人は三振するのがよっぽど好きなんだな、おい」


榊が笑いながら言う。



一瞬緊張が走ったが、何事もなくその場は過ぎた。


先発の榊は6回まで0点に抑えマウンドを降り、被安打2 、1四球 三振を4つ獲るという素晴らしい内容だ。


試合は終盤に逆転され、1対3で敗戦を喫した。


トーマスが日本のピッチャーとストライクゾーンにどれだけ対応できるのか。


開幕はもうすぐである。


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