第103話

 泣きながら震えるスゥーを、俺は優しく抱きしめた。


「泣くな、スゥー。仕方なかったんだ……」


 俺には、ガイウスを殺せる覚悟が無かった。それをスゥーが代わりにやってくれたんだ。


「ルシカ様! 私、ガイウス様を……」


 俺は、スゥーを抱きしめながら言う。


「スゥー。お前のしたことは間違いじゃない。だから、大丈夫だ」


 スゥーは、それ以上言葉を出さなくなった。代わりに神の魚の声が聴こえてくる。


「決着はついたようだな。4つの紋章を集めし勇者は、お前だ…… ガイウスの子、ルシカよ。さあ、3つの願いを言うがいい」


 俺は、スゥーを話すと神の魚の声へ答えた。


「1つめの願いは、我が友ファンドラを生き返らせてほしい」


「うむ。いいだろう」


 突然、まばゆい光が発せられる。その光の中から、出てきたのはファンドラだった。


「ここは……? 私は……? ルシカ君、それにスゥー君。フィーナ様!」


 生き返ったファンドラに、スゥーは抱きついた。


「ファンドラさん! よかった! 本当に生き返ったんですね!」


「ああ…… 私は、死んだはず。ルシカ君が生き返らせてくれたのか?」


 俺たちが、なごんでいる所に神の魚の声は響く。


「さあ、次の願いを言うがいい」


 俺は、真黒を見て答えた。


「ここにいる真黒遼を、転生前の元の世界に戻してやってほしい。転生前の状況のままで」


「承知した」


 またもや、まばゆい光が発せられ真黒を包み込む。真黒は、光の中から声を出した。


「ありがとうございます! ルシカさん。いや、磯崎さん! また、前の世界でお会いしましょう!」


 光とともに、真黒は消えていなくなった。


「真黒は今、元の世界に戻した。さあ、3つ目の願いを言うがいい」


 神の魚の声に、俺は少しためらう。スゥー、ファンドラ、フィーナの顔を順番に見渡した。


「ルシカ様、今までありがとうございました。元の世界に戻っても、元気でがんばってくださいね」


「ルシカ君…… ありがとう」


「さっさと、元の世界にお戻りなさい。奥さんと子供が、待っていますわ」


 皆、俺に別れの言葉を告げた。俺は、神の魚に答える。


「3つ目の願いだ。俺の父を…… ガイウスを生き返らせてほしい」


「ルシカ様!?」


 俺の声に、スゥーが叫ぶ。


「なんで、ガイウス様を? ルシカ様が元の世界に戻れなくなってしまいます!」


「いいんだ。スゥー…… やっぱり、ガイウスは転生したとはいえ、俺の父だ。母さんの元に連れて帰らなくちゃな」


 神の魚の声が響く。


「承知した。では、ガイウスを生き返らせるぞ」


 まばゆい光が発せられる。これで、よかったんだ。俺は、そう思うことにした。ところが、まばゆい光は俺の体を包み始めた。


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