第66話

 俺たちは、砂漠の町で宿屋を探し始めた。宿を探す過程で分かったことは、この町には大きなオアシスがあるらしい。そのオアシスを町長が独占しているのだとか。それで、基本的に物価が高いらしい。


「お、この宿屋はどうかな? 入ってみよう」


 『砂漠の月亭』という名の宿屋に入ってみる。1階は酒場になっており、2階が宿屋のオーソドックスなこの世界の宿屋だ。


「オヤジ、部屋は空いてるかい?」


「ああ、お客さん。1部屋だけなら空いてるぜ」


 ラッキーな事にようやく空いている宿屋を見つけることができた。基本的にフィーナはベッドに、俺とスゥーとファンドラは床に寝るので、1部屋で十分だ。


「じゃあ、オヤジ。チェックインを頼むぜ。あと、食事もだ」


 料金は通常の宿屋の2倍と、かなり高いが…… この砂漠の町ではしかたがない。俺たちは、1階の酒場で食事をすることにした。


「久しぶりに、まともな食事ができましたわ」


 フィーナが、喜んで食べている。まだ、砂漠に入って2日くらいしか経っていないのだが。


「さすがに、この町じゃお風呂は無理そうですね。ルシカ様」


「水が有料だからな、あきらめろ。スゥー」


 スゥーが残念そうな顔をしている。ファンドラは、相変わらず口数は少ないが美味しそうに食べている。


「じゃあ、そろそろ寝るか」


 夜も更けてきた。俺たちは2階の宿屋のスペースに移動する。


「やったわ! ベッドがありますわ! ようやくベッドで寝れますわ!」


 部屋には、小さいがベッドがあった。フィーナは人魚の姿で、ベッドの上を跳ねている。


「ルシカ様の隣でようやく寝れます。嬉しいな」


 スゥーは、早くも俺の隣を陣取る。ファンドラが、入口の所でポツンと立っていた。何か言いたそうな顔をしている。


「ファンドラ、どうしたんだ? そんなところでボーっとして」


「あ、あの…… ルシカ君」


 ファンドラは、言葉をつまらせていた。


「どうしたの? ファンドラさん」


 スゥーも心配そうに尋ねた。ファンドラが口を開く。


「わ、私も…… その、ルシカ君の隣で寝ても良いだろうかッ?」


「べ、別にかまわんが……」


 改まって言われると、俺も照れてしまう。


「その、先日は迷惑をかけたし…… ルシカ君に、嫌われてしまったと思って……」


「大丈夫ですよ! ファンドラさん! ルシカ様は、そんな事で怒ったりしません。さあ、こっちに」


 なぜか、問いにスゥーが答える。


「あ、ありがとう……」


 ファンドラは、恥ずかしそうに俺の隣に来て横になる。その表情を見ると俺も、なぜか恥ずかしくなってしまった。


「ああ、もういいから。早く寝よう!」


 俺はそう言うと、目を閉じた。


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