第61話

 しつこくデスサンドフィッシュは、俺の背後から飛びかかる。その度に剣で牙を受け止めるが、勢いまで受け止めることはできず俺は吹き飛ぶ。


「ぐは! このままでは、マズい…… 奴はどうやって砂の中から俺の位置が分かるんだ?」


 俺は走って、その場を離れようとする。その時、脳裏にある事がよぎった。


「そうか! 足音か! ならば、ロケット式ストームファイア!」


 俺は地面に向かって、ストームファイアを打ち出す。その爆風で空へと舞い上がった。ストームファイアにはこういう使い方もある。


 次の瞬間、俺が地面にいたはずの場所からデスサンドフィッシュが飛び出す。しかし、見事に空振り。俺は、全く別の場所に着地する。


「今の着地音に奴は気づいたはずだ…… どうする?」


 俺は、そう言いながらも背中から釣り道具を取り出した。相手が魚ならやることは決まってる。


「水の中じゃなくても、魚は魚! 釣り上げるまでよ」


 デスサンドフィッシュのヒレが、こちらへすごいスピードで向かって来る。俺は背中の荷物を手前へ放り投げた。ドサッという音がする。これで、奴が音だけを頼りにしているなら感覚は狂うはず。


「さあ、来い!」


 予想通り、荷物が落ちた場所からデスサンドフィッシュは飛び出した。真っ向から対峙する形となたっが、俺は冷静にルアーをデスサンドフィッシュの口へと放り込む。そして、突撃をひらりとかわした。


「やった! っと、うおおおおお!」


 ルアーは見事にデスサンドフィッシュの口に食い込んだらしい、糸がすごい勢いで張りつめて引っ張られる。その力は圧倒的で、俺は砂の上をジェットスキーのように滑り出した。


「何て力だ! しかも砂の上じゃ踏ん張れない」


 釣り糸と竿は、魔力で強化されているので切れることも折れることも無いだろう。しかし、障害物の無い砂の上でデスサンドフィッシュの力に俺は引きずり回されるハメになった。


「ルシカ様ーッ! 大丈夫ですかーッ!」


 遠くに見える結界から、スゥーの叫び声が届いた。大丈夫とは決して言えない状況だ。砂の中から奴が出てくるまで、とにかく粘るしかない。


 バシャッ!


 砂煙を吹き上げて、ようやくデスサンドフィッシュが姿を見せる。


「今だ! ストームファイア」


 炎の魔法を浴びせかけたが、デスサンドフィッシュはさした効果もなく砂の中に潜ってしまう。考えてみれば、灼熱の砂漠に棲む魚だ…… 炎はあまり効かないのかもしれない。


「魔法じゃダメか…… ならば、やはり剣をぶっ刺すしかないな」


 しかし、この距離では剣を振っても届かない。ならば、剣を投げて仕留めるしかない。チャンスは1度きりだ。


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