第9章 鯉じゃなくて恋かも! ~ドキドキ婚約裁判編~

第51話

「フィー様やファンドラにも食わせてやろう。身の部分を持って帰ろう」


「そうですね! ルシカ様。2人とも喜びますよ、きっと」


 俺たちは、溶岩に棲む魚の身をテイクアウトすると火山を後にして町に戻ってきた。宿につく頃にはちょうど夕飯時になっていた。ファンドラも既に戻っており、全員で食卓を囲んだ。


「こんなの食べたことありませんわ! 王族育ちのこのわたくしですら、食べたことありませんわ!」


「うむ、美味いぞ! ルシカ君」


 フィーナとファンドラも俺たちが釣った魚の身を食べて驚愕する。魚とは思えないような上品で癖のない味、舌先でふわっととろけるような柔らかい食感。


「そうそう、それともう一つみんなに報告があるんだ。スゥーの故郷を探すのに重要な手がかりを見つけた」


 俺は、そう言うとヒートハンドの魔法をとなえ、スゥーの額に熱い手を押し当てた。そして、離すと浮かんでくる赤い謎の紋章。


「スゥーの額は、熱を加えるとこんな紋章が浮かんでくる。おまけにスゥーの体には、炎に耐性があるようなんだ」


 それを見たフィーナが答える。


「それって、火の巫女みこあかしかもしれませんわね。そうなると、わたくしと同じような王族の血縁者かもしれませんわ」


「火の巫女……? それは、いったい何だ?」


「わたくしは、水の巫女の遠縁にあたる王族の出身なのですわ。他にも風の巫女とか大地の巫女とかいますわ」


「つまり、火の巫女について調べれば、おのずとスゥーの故郷を見つけられるってことだな」


 そこに、ファンドラが割って入る。


「よかったな、スゥー君! 君の故郷はすぐに見つかるかもしれない。ところで、私の方はこの町のドーラ神殿に行ってきたわけだが……」


「何か情報を掴んだのか? ファンドラ」


「いいや、残念ながら別件だよ。私は訴訟そしょうを起こすことに決めた!」


 ファンドラがそう言い放つと、ドカドカと数人の男たちが宿の中に入ってきた。男たちはメイスなどの武器で武装しており、格好はファンドラと同じような神官戦士のいでたちをしている。


「魔法戦士ガイウスの息子、ルシカだな? ドーラ神殿までご同行願おう」


 神官戦士の一人が俺に声をかける。俺は驚いてファンドラを見た。


「ファンドラ!? これは、いったいどういうことなんだ?」


「ルシカ君! 私は、君を婚約詐称こんやくさしょうの罪で訴えることにしたのだ。私とフィー様、どちらが君の婚約者に相応しいか、神聖なる神のもとで白黒つけようじゃないか」


 神官戦士の男の一人が、俺の腕をつかむ。


「ルシカ殿、あなたを拘束します。今夜は神殿の独房でお休みください」


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