第50話

「お前は、神の魚か!?」


 釣り上げた魚が返事をしたのは、炎の息だった。ファイアウォールを発動させて、ガードする。とりあえず、神の魚ではなさそうだ。これ以上、炎を吐かれちゃあたまらない。


「せいやッ!」


 俺は剣で、魚の首を跳ね飛ばした。何秒かピクピクと動いていたが、ついに魚は生き途絶えた。


「ルシカ様! 大丈夫ですか?」


 マントを羽織ったスゥーが俺の元へと駆けつける。


「俺は大丈夫だが、スゥーの方こそケガはないのか? もろに炎を浴びていたぞ」


「それが…… 熱いとは思ったんですけど、意外と大丈夫だったみたいです」


 あの時、スゥーの額に浮かんだ紋章は何だったのか? 炎に関係あるんだろうか?


「ちょっと、我慢してくれ! ヒートハンド」


 俺は炎の魔術で右手に熱を纏う。そして、その手をスゥーの額に押し当てた。そして離すと、スゥーの額にはルビーのように輝く赤色の紋章が浮かび上がる。


「やっぱりだ…… これは、スゥーの出自に重大な関わりがあるかもしれない」


「どうしたんですか? ルシカ様」


「お前の額は熱が加えられると、ある紋章が浮かび上がるんだ。それと火に耐性があるようだ」


 スゥーは不思議そうな顔をする。


「そういえば、火傷やけどはしたことないかな?」


「とりあえず、スゥーの故郷を探す重大な手がかりが見つかったってことだ」


 熱に耐性がある、額の紋章…… これだけの条件があれば、この広い東方の大陸でも探すことはできるだろう。


「ところで、ルシカ様。この魚はどうしますか?」


 スゥーは、足元に転がる魚を指さした。


「そうだな…… 食べてみるか?」


「た、食べるんですか!? どうやって」


「溶岩の中を泳いでいるくらいだから、焼き魚って訳にはいかないだろうな。生の刺身でどうだろう?」


「わ、私は嫌ですよ」


 俺は、魚の身を剣で切り開く。溶岩の中を泳いでいるだけあってうろこは固く、おまけに熱い。しかし、中は意外に白身の多い魚だ。身の部分をカットして食べてみた。


「ん…… これは…… 美味い!」


 温かい刺身は、まるで魚とは違う鶏肉に近いような味だ。そして、口の中でふわっととろけるような感覚。塩で味をつけるとさらに美味くなるかもしれない。


「美味いぞ、スゥー! お前も食べてみろ」


「本当ですか? 溶岩を泳いでいた魚ですよ、毒とかあるんじゃ……」


「忘れたのか? 俺は、解毒の魔法のエキスパートでもあるんだぞ」


 渋々という感じでスゥーも魚の切り身を口に入れる。しかし、その瞬間に目を輝かせる。


「すごい! 美味しい!」


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