第48話

 その日の夜は、蒸し暑い熱帯夜となった。フィーナはふかふかのベッドですやすや寝ている。ベッドの下に毛布を敷いて俺は寝ていた。両隣にはスゥーとファンドラが密着すれすれに寝ている。


「浮気したら、慰謝料1億! その後、殺す」


 俺は久しぶりに前の世界での妻の言葉を思い出していた。隣に美女と美少女が寝ているこの状況は、浮気と呼べるのだろうか。正直に言うと俺にだって性欲がないわけではない。ちょっと触ってみたいとか、思わないわけでは無い。


「はやく、元の世界に戻らなきゃ……」


 俺は、そうつぶやくと眠りについた。


 そして翌日の朝、フィーナを宿に残しファンドラと別れて、俺とスゥーは町の北にあるという火山を目指して歩き始めた。


「火山までの道中、モンスターが出るかもしれないから気をつけるんだぞ、スゥー」


「はい、ルシカ様」


 宿の主人に聞いたところでは、ここ東方の大陸では西の大陸に比べてモンスターの数が多いらしい。この町の近くでも、ゴブリンやコボルトなどがいたり、火山に棲むモンスターもいるとの事だった。


「そういえば…… 魚系のモンスター以外に出会ったことが無い気がするな」


「私は奴隷だった時に、ゴブリンを見たことがありますよ。とても恐かったです」


「心配するな! 俺は魔法戦士だ、ゴブリンなんか敵ではない」


 そんな会話をしながら歩いていると、ようやく火山が見えてきた。ここからは険しそうな登山道に道が変わっていく。頂上にある火口からは煙が出ているのが見えた。


「スゥー、気をつけて歩けよ。後ろからモンスターが出ないか注意してくれ」


「はい、気をつけます。ルシカ様」


 俺たちは慎重に登山道を登っていく。険しいが、一応道があるので登るのにそれほど苦労はなかった。そして途中で休憩も挟みつつ登り続けていると、結局ゴブリンなどのモンスターに出会うこともなく、あっさりと頂上に着いた。


「暑いな……」


 火口付近は異様な暑さである。俺は、火口から覗き込むと溶岩がグツグツと煮えたぎっているのが見えた。これじゃあ、いつ噴火してもおかしくない。


「ルシカ様、こんな溶岩の中に本当に魚なんているんでしょうか?」


「それは、釣ってみなきゃ分からないな」


 俺は、荷物から釣り道具を取り出して準備を始める。スゥーがさらに尋ねてくる。


「ルシカ様、この溶岩でどうやって釣りをするんですか? 針も糸も燃えちゃうんじゃないですか?」


「それなら心配いらない。強化の魔法を使う。魔法で強化された釣り糸とルアーなら、溶岩の中でも燃える心配はない」


 そう、俺の強化の魔法はこういう時にこそ役に立つ。


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