第47話

「今は昔、数百の年が流れるよりはるか昔…… 世界を統べる神の魚あり」


 吟遊詩人は手に持っていたギターのような楽器で、演奏をしながら歌い始める。どことなく懐かしいような不思議なメロディーだ。


 序盤から、神の魚の単語が出てきた! 今度のうたは期待できるかもしれない。


「大地は荒れ狂い、山は火を噴いた。人々は苦しみ、神の魚に願いを乞うた」


 火山が噴火したのだろうか?


「人々の願いを受けて、神の魚が舞い降りた。炎の海にその身を沈め、噴き上げる火を静めた」


 火山の噴火を神の魚が止めたのか……? ただのおとぎ話のようだが、神の魚の存在を知っている俺には理解できる。あの魚なら、それくらいできるだろう。


「今もなお、火の海に神の魚は眠る……」


 吟遊詩人は歌い終えた。俺は、懐から金貨を出して吟遊詩人に手渡す。


「素晴らしいうただったよ! ところで、その詩にでてくる火山ってのはどこにあるんだい?」


 そう、何より聞きたいのは神の魚の居場所。


「ありがとうございます。この町から少し北に行った所にある火山です。この町では有名なうたですよ」


 吟遊詩人は礼を言うと、俺たちの元を去っていった。この詩を聴いた以上、火山に行かない訳にはいかない。テーブルには詩に大して興味も示さない面々が座っている。


「あ、明日の予定なんだが……」


「分かってますよ、ルシカ様」


 俺が口火を切ろうとしたところに、スゥーが割って入る。


「行くんですよね? 火山に」


「う、うん。もちろんスゥーの故郷の事も調べるつもりだが」


「釣り好きのルシカ様なら、そう言うと思ってました。私の事は後でもかまいませんから…… ついていきます」


 スゥーは、火山への同行を申し出てくれた。


「わたくしは、火山なんて絶対行きませんわよ!」


「ルシカ君の釣り好きにも困ったものだ。スゥー君がいいなら、行ってくるといい」


 フィーナとファンドラも火山には興味は無いようだったが、許可を得ることはできた。これで、神の魚の手がかりをつかめるかもしれない。前回の詩では空振りだったが、人魚が実在していたのは確かなのだから。


「それより、今夜の部屋割りはどうするのかな? ルシカ君」


 ファンドラが怖い目をしてこちらを見ている。


「ルシカは、わたくしの婚約者ですわよ。わたくしと同じ部屋になるのが当然ですわ」


「スゥーは、ルシカ様の隣じゃないと眠れません!」


 また、いつものやり取りが始まってしまった。一見ハーレムのようで、男には嬉しい状況かもしれないが、俺にとっては悩ましい問題だ。


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