第42話

「頼む! フィー様が一緒に戦ってくれないと、この船は全滅する!」


「この船が全滅しても、人魚である私は一人で逃げられますわ! おーほっほっほ」


 高笑いを始めるフィーナを俺は何とか説得しようと必死になる。


「お願いだ! フィー様だけが頼りなんだ! 何でもするから、このとおり!」


 頭を下げる俺に、フィーナは不敵な顔で返事をした。


「そこまで言うなら、戦ってあげてもよくてよ。ただし、一つ条件がありますわ!」


「条件って何だ?」


「私と婚約なさい! ルシカ! それが条件よ!」


 フィーナの出した条件にファンドラが反論する。


「待て! ルシカ君は、既に私の婚約者フィアンセだぞ! それはダメだ!」


「ファンドラさん! ルシカ様は誰とも婚約なんてしてませんよ!」


 スゥーまで口論に入ってきて混乱状態になってしまった。しかし、シップイーターが迫り来る現在いま、口論などしている場合ではない。


「分かった! フィー様! 婚約することを約束する!」


「グッド! ですわ。それじゃあ、ダーリン! あの巨大な魚を倒しましょう」


 俺とフィーナは、一緒に海に飛び込んだ。船上でファンドラの叫ぶ声が聞こえた。


「ルシカ君! 他の女性との婚約なんて認めないぞ! 自由の女神ドーラに誓って!」


 海面に浮かびながら、俺とフィーナは作戦の打ち合わせをした。


「とにかくシップイーターの興味を船から、俺たちにひきつけよう」


「分かりましたわ! いきますわよ!」


 フィーナは俺を抱えて、海の中を高速移動し始めた。ものすごい水圧が俺にかかってくる。


「がぼば…… ごぼぼ……(息ができない)」


「これくらいで、情けないですわね」


 フィーナは人魚の特殊な能力ちからで、海の中でも話すことができるようだ。そうこう言ってるうちにシップイーターが目前まで迫ってくる。やはり大きい! 海の中で見るとより改めて大きく感じる。


「ごぼぼ…… ごがば……(これでも喰らえ!)」


 シップイーターとすれ違いざまに、俺は剣をヤツの体に突き立てる。そのままフィーナの力で切り裂く予定だったが…… 思った以上にシップイーターの外皮は固かった。ほんのかすり傷しかつけることはできなかった。


「ごぼぼ…… ごがぼぼ……(ちくしょう! 頑丈だな)」


「でも、こちらに注意を引くことはできたようですわ!」


 シップイーターは船を狙うのをやめて、俺たちの方向に向きを変えている。


「ごぼぼ…… がごばぼ……(いったん水面に出てくれ、息が続かない)」


「とりあえず逃げますわよ! あいつを船から引き離しますわ!」


 フィーナは俺を抱えて、再び海中を高速で泳ぎ始めた。


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