第7章 船釣り編 ~いざ! 東方の大陸へ!~

第38話

 俺たちは日が暮れる前にオリアブの町へ帰り、宿屋にてファンドラと合流した。俺は椅子に座って待っていたファンドラに声をかける。


「よう、ファンドラ! 船の手配はどうだった?」


「おかえり、ルシカ君。船の手配は順調だ、ちょうど明日に東方大陸行きの船に乗れる事になった。ところで、今日君らが行った人魚のほこらだが……」


 ファンドラの表情が少し険しくなる。俺は軽く尋ねる。


「人魚の祠がどうかしたんだ?」


「実は、人魚の祠は漁場を荒らす悪い人魚を封印している場所らしい。入り口には強い結界が張ってあるとのことだ。常識ある君の事だ、むやみに結界を壊すような事はしていないと思うが……」


「悪い人魚で悪かったですわね!」


 俺の後ろにいたフィーナが口を挟む。ちなみに俺のマントをロングスカート風に巻いて、下半身は隠れている。


「おや、ルシカ君。その女性は誰だ?」


「いや…… それが、その……」


 俺は何とも言えない表情でうまく答えられない。フィーナはスカートをめくって、ファンドラに下半身を見せつけた。ファンドラの表情が驚愕に変わる。


「に、にに人魚ッ!」


「今は人魚だけど、元は王族の出身。名前は、フィーナ・エクトリア・ヴァレンタインよ! が高いわ! 控えなさい!」


 ファンドラは、素早く俺の胸倉を掴み怖い顔で急接近する。


「これは、どういうことか説明してもらおうか! ルシカ君!」


「うん、ごめん。結界壊しちゃった……」


「私は止めたんですけどねー、ルシカ様がどうしても中にはいりたいって」


 スゥーが呆れた顔をしながら、俺を追い打ちする。俺は冷や汗をかきながら何とか弁明しようとする。


「とにかく…… ついてくるって聞かないんだ。しょうがないじゃないか……」


「私の夫として無責任すぎるぞ君は! だいたい人魚がどうやって陸を旅できるんだ?」


 その問いに、人魚自身であるフィーナが答えた。


「あら、陸ぐらい歩けるわよ。この町まで歩いてきたし」


 どういう構造なのか知らないが、フィーナは人魚の下半身でスムーズに移動して見せた。


「まあ、走ったりするのは無理だけどね。これくらいなら簡単ですわ! それより、あなた! 高貴な身分である私が名乗ったのよ! 名を名乗りなさい!」


 ファンドラは、ようやく俺を放しフィーナに深々と頭を下げた。


「失礼しました人魚様。ドーラ教神官戦士ファンドラと申します」


「おほほ! フィー様と呼んでよろしくってよ」


「とりあえず、新しい仲間の歓迎もこめて食事にしよう! そうしよう!」


 俺は、大きめの声で強引にその場を収めることにした。


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