第4章 その身は鎧の如し! アーマードフィッシュ編

第20話

「ちょっと! ファンドラさん! ルシカ様にくっつきすぎです!」


 頬をふくらまして、ムスッとした顔のスゥーが声を上げる。


「私は、ルシカ君の妻だからな。くっついて歩いても問題は無いだろう?」


 ファンドラは、俺に腕を組んだ姿をスゥーに見せつける。


「ルシカ様は結婚するなんて言ってませんよ! 迷惑がってます!」


 両手に花というか……

 俺を挟んで2人の乙女が喧嘩する。困った状況だ……


 ドーラの町を出発してから2時間ばかり、ずっとこんな状況が続いていた。


「ファンドラ…… 俺はまだ修行中の身だし、スゥーを送り届けるという使命もある。結婚はできないよ」


「ならば、スゥー君を故郷に早く送り届けてから、式を挙げよう!」


 ファンドラは、俺の耳に息を吹きかけるように声を出す。

 思わず、俺はビクッとなってしまった。


「またくっついて! 離れて歩いてください!」


 スゥーは、俺とファンドラの間に割り込み引き離した。


「ルシカ様もデレデレしてるから、つけあがられるんですよ!」


 ……なぜか、スゥーに怒られてしまった。


「お、俺はデレデレなんてしてないぞッ! それより、ここから先は山道になるモンスターが出るかもしれないから、警戒しながら進もう」


 辺りは既に山林地帯となっていた。こういう場所では、獣系のモンスターが現れるので、十分な警戒が必要となる。


「それもそうだな…… この山道を行けば、村が確かあったはずだ。野宿は危険だから、そこまでは急いだ方がいい」


 ファンドラも真面目な顔になって、ようやく俺から離れてくれた。俺たちは一列に並び、警戒しながら山道を進んでいく。

 途中で狼の鳴く声や、草むらがガソコソと動く事があったが、幸いにしてモンスターとは遭遇しなかった。


 そして、夕暮れ前には小さな村に辿り着いた。


「この村に宿はあるかな?」


 あまりに小さな村だったので、俺は不安になった。しかし、1軒の店が防具屋兼宿屋となっていたので安心した。


「ようこそ、旅の方! この村名物のアーマードフィッシュの鱗でできた防具です! 見て行ってください! 2階は宿にもなっていますよ」


 露出度の高い服を着た、綺麗なお姉さんが防具を販売している。


「アーマードフィッシュ……? 魚の鱗で鎧が作れるのかい?」


 俺は、思わず魚の話題に食いつく。


「そうだよ! 軽くて頑丈! おまけに火にも強い!」


「値段もかなり高いようだが……」


 ファンドラは値札を見て、さりげなくつぶやいた。


「値段の分、高性能ってことですよ! どうですか? 1着」


「うーむ、火に強いというのは助かるかもしれないな! セルフファイアーで全裸にならなくても済むかもしれない」


「ルシカ様! 先に宿で休みましょうよ! スゥーは疲れました」


 魚鱗の鎧に興味津々の俺の腕を、スゥーが引っ張った。


「はい! お泊りのお客さんご案内します! 部屋は2つしかないけど良いですか?」


「うむ、ルシカ君と私は夫婦だから同じ部屋で…… スゥー君はもう一部屋使いなさい」


 ファンドラがそう言うと、スゥーが食ってかかる。


「ルシカ様はスゥーと一緒に寝るんです! ファンドラさんは別の部屋でゆっくりしてください」


 2人は今にも喧嘩しそうな勢いだ!


「俺が1人で寝るから! スゥーとファンドラは相部屋にしてくれ!」


 俺は、喧嘩を止めるように部屋の配置を決めた。スゥーとファンドラは納得していない感じだったが、何とかその場は収まった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援した人

応援すると応援コメントも書けます