37、『道化師殿、何を考えることも無く、色々と、ごたごたと、音という箱の中で泣く』

 残酷、残酷なぁ。痛みは文字は心には痛みしか残らない。言葉とは凶器、狂気の産物、知恵の生み出した陽気な怪物。人、独り佇んでなにとも自らの過去を省みることはなく。ただ包丁の雨を降らせ河を流れ続ける。しかして、止まった、縫い付けられたその丁重な言葉には時の流れは無く、ただ表層に永遠とわに溢れ落ちることも無く。ただ涙目に空の青を浮かべ岩の如く動かぬことも無く。孤独となった貴方の心を独り弄ぶ道化師ピエロ殿の仮面の涙のように凛としてヒョウとして泣く。疾く、刻々と迫る期限に背を押されることを涙する。その圧力プレッシャーの主に、「消えろ」と恨み言を歌うように、譜面を描くように頑としてその道を逝く。失恋した君のその存在をハンカチーフで拭き取ろう。『申し訳ありませんが、貴方の人生の性能をナーフさせて頂きます。幸せの値の下方修正です。メンテナンスのお詫びとして————』と、まったくもって煩いそれが聞こえる。冴えないその顔、目つきの写真は貴方の新聞の一面を飾る。其はまるで君の心情のリリーフ、刻み込まれたパールは光を弾いてその心に巣食う悪魔退治を承認する、けれどその試みは徒労。嘘吐きな、如何様愉快、道化師ピエロ殿。投げかける言葉は残酷な、残酷な。星降る夜の茅葺き屋根、お天道様はお空を操作する機械であるからお休みになって。風邪を切って鳴く小夜啼鳥さよなきどりは透き通って爛と有る。踏みつけ薄くなったソールは言葉の上を刺されながら傷つき、しかし持ち主は笑って歩いている。ポエムを殴り書き、四季の流れを文字と解き、人の感覚・風情を異に咲き、即身仏となって流れ出るのは瘴気。反魂香は今一時の幻想。君に見つけた言葉を投げつけて打ち付けて探して続けて失踪。放送は『午前0時から開始いたします』との事、乞うご期待。そのくだらない、くだらない一言は僕の心臓を抉り削って引き摺り出し僕を心の深く深く深く有る迷宮の中に突き落として異世界へ転送、自らの行いを詰問する馬鹿は幻想の中独り佇む理想の影の中に在る。理想は成功、現実およびあり得る可能性は多分恐らくきっと失敗。委細承知、自らの勇気に乾杯、エールを応援の言葉をお悔やみの言葉を弔辞を。貴方のおめでたいその頭の中奥底深くに「御愁傷様です」と。悔しく在るその心境を破壊、しかしてその意図を理解はせず。言葉の深海に潜るダイバーの暗くなる視界に向けたクールな妄想はその言葉をオウムのように返すのみ。嗚呼、道化師ピエロ殿、お休みになって。貴方のその仮面は醜くてあまりにも、あまりにも醜くてとても見て居られる物じゃあ無い。ウィドウ、ただ独り亡き人を眺める。それを羨ましく思う、その成就は羨ましく思う。ショーウィンドウに並べられた君を食べたい。されどそんな、夢見る君は下郎/僕をホームに置き去りにして乗車、電車は発車。それはきっと送別の音。別れの時を知らせるベル。ベルの音はチリンチリンと擬音語で聞こえてくる、けれどこんな文字の世界に音楽は存在していないから、平面的に、二次元的な軌道で表現するしか無い。チリンチリン、チャリーンと。音の無いこの世界に意味なんてないからきっとこれが貴方に伝わることを貴方は願うと信じて、iOS端末の画面を叩き続ける僕/俺/貴方/私を理解/規定する必要はないということをここに記しておくことにする。残酷な、残酷な話で在るなぁ、と。

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