14、夏を走る僕らは永遠

 僕らは浜辺を走っている。僕らは笑顔で、浜辺を走っている。ざざーん、と寄せる波に、時々脚をさらして、ズボンをたくし上げて走り回る。誰かが、水をすくって、他の人にかけようとする。他の人は華麗に避けて、流れ弾は僕に当たる。笑い声が広がって、それでも僕は笑顔で、水をすくって仕返しをする。びしょびしょになった僕らは、笑顔で走り回っている。

 誰かがビーチボールを持ってくる。そのボールはトスされて、他の誰かに渡る。トスが繰り返されるうちに、そのボールは私の方に回ってきて、私はそれを返す。まるで糸が繋がっているかのように、ボールは美しい軌道で僕らを繋いでいく。だけど、その糸は誰かがビーチボールをトスしそこなって、顔に当たって地面に落ちて、途切れて切れる。それでも、僕たちは笑顔で笑い合った。

 僕は水鉄砲を持ってくる。僕たちは水着に着替えて、まるで歴戦の兵士のように、戦場ビーチを駆け回る。だけどその顔に兵士の様な深い傷、皺は無くて、笑顔でいつも笑い合っている。水に当たった彼女は死んだふりをして、当てた彼は勝鬨をあげる。直後、彼は討ち取られて、笑顔でそこに倒れこむ。そんな彼らを僕は横目に、自分の戦いに身を投げる。そのときは勿論、僕の表情かおは、満面の笑みで笑っている。

 沈む夕陽を眺めながら、僕らはいつも、語り合っている。頭から、水を被ったびしょぬれ間抜けな僕の笑顔を。ビーチボールを取り損なって、顔でトスした彼の笑顔を。撃たれた彼女の清々しい笑顔を、撃った彼の束の間の笑顔を。僕らはずっと忘れない様に、いつもいつも、いつまでも、語り合って笑い合う。


 日は地に沈んで夜が来るけど、僕はいつまでも、きっと忘れない。その為に明日は、今日を繰り返す。繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し繰り返し今日を明日にする。そうすればいつも今日でしょう?


 だってそうすれば僕たちはきっと、ずっと笑って居られるでしょう?


 だから、今日も私達は浜辺を走って、水を掛け合って、ビーチボールで遊び続けて、水鉄砲で戦争をする。繰り返し繰り返し。これから先はずっと今日でしょう。今日は一生続くでしょう。それはみんなの幸せでしょう。


 だから、僕らは夏を走って、それを永遠に繰り返すのです。永遠の笑顔を、守る為。

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