掌編短編集

紅葉林 槭樹

1、Monster

 Monsterは何時も何処かに在る。私達はただ願う。毎日毎日、うっかり偶然Monsterに出会わないことを願う。Monsterは怖い。

 Monsterはデフォルメされたカバの様な見た目で、二本の足でまるで人間の様に立つ。だけど、Monsterは私達の前ではたぶん、動かない。Monsterは置物みたいに佇む。

 Monsterを見た後に、Monsterから目を離すと、黒くなって死ぬ。と。別にMonsterにそんな能力が無いのはみんなわかっているけれども、それでもみんなはMonsterを目の前にすると顔色を変える。かくいう私も、Monsterは怖いと思っている。別にMonsterを見た人が黒くなって死んだわけじゃ無いのに。もし死んでたら誰もMonsterの見た目なんてわからないはずなのに。

 実際に見た感想としては、頭ではMonsterを可愛いと思える。よく薬局の前とかに居そうな可愛い置物に似ているし。でも、そう言う事は出来ない。やっぱり私は、Monsterを本能で怖がっている。死ぬ訳でも、トラウマになる様な見た目でも無いのに、Monsterは怖いのだ。

 私は目を離さない。Monsterは別に危険で無いとわかっているのに、目を離さない。これはみんなも同じ事である。生存本能はMonsterから目を話すことを許さない。

 結構時間が経ったと思う。Monsterは依然、目の前に佇む。明るい笑みを浮かべたまま、表情を変えず、佇む。退屈になった私は、言うことを聞かない体を他所に、話をしたいと思うようになる。Monsterには聞こえてるのかな?

 Monsterはきっと、寂しがりである。Monsterは自分が何をした訳でも無いのに、この仕打ちに耐えている。Monsterだって、人と話したいと思っただろう。Monsterだって、カエルや少女の様に、写真を撮られたいと思う。可哀想なMonster、いつもいつも二人ぼっちで、しかも相手には嫌われる。私はMonsterが、少なくとも頭の中では、大好きだから。Monsterも喜んでいると思う。きっとMonsterだってお腹が空くだろう。私も空いた。

 Monsterから目を離さないで、私は横になる。Monsterから見れば、私はテレビの前の親父に見えるんだろうなぁ、こわばった表情を除いて。これでもMonsterだって人並みの感性と感情を持っているので在る。と思う、たぶん。

 視界が狭くなる。もうすぐMonsterともお別れかなぁ?まぁいいや、きっとまた、Monsterに会えるよね!どうせ死なないし。ああ、アスファルトは硬いなぁ。じゃあね、Monster。また明日。



 ざんねん。



 ほんとうに、真っ黒になって死んじゃった。ごめんね、Monster、会えなかったよ。ごめんね、Monsterなんか作っちゃって。二人して要らないみたいだよ。今度こそおやすみ。また会えるといいね。




 私達は……………如何して怪物Monsterなの?






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