Episode.13 この二人に『決闘』という存在があったら

 眩しさのあまり、目を覚ますと、目の前で夜空が気持ち良さそうに眠っていた。

「っと、本読んでたら寝落ちしてたか・・・・・・。しかももう日昇り始めてる・・・・・・。ん?昇ってるのか?沈んでるのか?」

 時刻石を確認する。時刻石は綺麗な水色に輝いていた。つまり、今は水の刻の真っ盛り。午前七時から八時の間だ。

 となると、俺たちは昨日の昼過ぎから約十八時間寝ていたことになる。

 そのことに気づいた途端、腹の虫が鳴った。

「・・・・・・無理ないよな」

 夕食抜きで夜を越したのだ。さすがに腹の減りは尋常じゃない。

「何か、がっつり食えるものは・・・・・・」

 不躾だが、夜空の部屋のキッチンを漁ってみることにした。

 とりあえず、キッチンにある具材全てをワークトップに移す。ちなみに、ワークトップを言い換えると、カウンタートップになる。

「この具材からいけば・・・・・・うん、ハンバーグだな」

 単純に食いたかっただけだ。運がいいことに、挽肉その他諸々の具材は揃っていたので、ハンバーグに決定だ。

「それにしても、夜空起きねーなー。腹減ってねーのかな?」

 夜空に限っては昨日の昼から何も食べていない。用意しておいたサンドイッチもそのままの状態で寂しそうに置かれている。

「ま、起きれば腹減って動けねーみたいなこと言うだろうし、夜空の分も作っておくか」

 量を倍にして下準備を進めていく。

 そんな時。

「んー・・・・・・ん?あら、隼斗。どうして私の部屋で料理なんかしているのかしら?」

「起きて開口一番に言うことがそれかよ!もっと他のがあっただろ!」

 主に空腹のことについて話して欲しかった。

「そうねー・・・・・・不法侵入?」

「違うわ!それに何故疑問形!?」

「しかし隼斗。寝起きからそんな喧しくされると、腹が立つのだけれど。私の朝はもっと穏やかなのよ」

「知ったこっちゃねー!」

 そこでふと、違和感に気づいた。

 ──昨日の夜空じゃない。いつもの夜空だ。

 これはいい傾向として捉えるべきなのか?やはり、ただ単に風邪にやられていただけなのか?真相は闇の中だ。

 わからないことを探ろうとしても闇にどんどん足を踏み入れていって迷ってしまうだけなので、とりあえず思考は停止する。そして今、キッチンを奪取しようとしている少女を押し退ける方に専念する。

「早く・・・・・・私のキッチンから・・・・・・出ていきなさい・・・・・・!」

「ちょ、待てって!そっちの手を掴んだら包丁が!おいやめろ!」

 玉ねぎをみじん切りにしていたところだったので、右手には全体的にぎらぎらと何故か怪しく輝いている、普通の包丁を持っていた。

「その場所を大人しく私に返せば穏便に済むわよ?」

「ちなみに、返さなかったらどうなるの?」

「愚問ね。血の海が出来るわ」

「怖いわ!そんなキャラだったっけ!?」

「私はいつでも怖い存在よ」

 軽々と言い放ったつもりなのだろうが、俺は聞き逃さなかった。

 けど、問い詰めようにも心当たりの無いような態度を取られると、こちらとしても踏み入り難い。

 今はそっと胸の中にしまっておく。──決して忘れないように、付箋をこれでもかというほどくっつけて。

「そんなことより、早くどいてくれないかしら。私の食べたいものが作れないわ。そもそも、あなたは何を作ろうとしていたの?」

「見ての通りハンバーグだよ。もしかしてー、ハンバーグの作り方わからないとかー?」

「あら、随分と上から言ってくるのね。それくらいわかっていたけれど・・・・・・」

 夜空は玉ねぎのみじん切りに目をやる。その目はどこか哀れみを含んでいるようだった。いや、俺的に自信のある切れ具合だったのだが、夜空には不評のようだ。

「はぁ・・・・・・わかったわ。あなたはそこに座ってなさい。私が作るわ」

「おっ、夜空の初めての手料理に胸をふくらませて待ってるぜい」

 さり気なくキッチンに立つなと言われていることに気づかないほど俺は鈍感じゃない。しかし、夜空が腕を振るってくれるのであれば、それに甘んじよう。

 それにしても、やることを取られて暇になってしまった。

 ・・・・・・バタンッ。

「ん?何の音だ?」

 何事かと思い、怪訝な顔をしながら音のした場所、キッチンへ向かう。

 そして、それを見て俺は絶叫する。

「なっ、おい!夜空!?大丈夫か!?」

 力なく横たわっている夜空。運良く包丁は手にしていなかったらしい。代わりに、挽肉の入ったボウルは中身を床に散らばらせている。

「掃除はとりあえず後回しで・・・・・・おい!おい夜空!」

「・・・・・・んん」

 意識はあるようだ。ひとまず一安心。

「おまえ、まだ熱あるんだろ?」

 返答を求めている問いではなかったので、無遠慮に額に手を当てる。

「・・・・・・んー、まだあるなー」

 昨日ほどではないが、まだ熱はある。そんな状態で無理をすれば当然限界はすぐにやってくる。

「どうすれば無理しねーかなー・・・・・・」

 しばし黙考。

 そして一つの解に辿り着いた。

「よし、手首と足首縛ってれば動けねーだろ」

 何て残酷なことをするのだろうと内心ではわかっていたが、無理をさせないためなら仕方ない。これくらいしないと彼女は意地でも無理をする。

「悪く思うなよ、夜空」

 寝顔に手を合わせて一礼。・・・・・・別に崇めるようなものではないのだが。

 深々と一礼を済ませると、再び俺がキッチンに立つ。もちろん、夜空のしていたことの続きだ。

 しかし、挽肉が無残に床に散らばっているので、一からやり直しだ。量は何故か知らないが、持て余すほどあったので気にすることなく使える。夜空には申し訳ないが。

 

 「・・・・・・こんなに疲れるっけ?」

 フライパンの上でいい音をたてながら焼けているハンバーグをフライ返しでひっくり返しながら愚痴をこぼす。

「そもそも、何でハンバーグ作ろうと思ったんだ?こんなに面倒なの」

 作ってみる前は気力で何とかなるだろうと甘い考えでいたが、いざ作ってみると想像を遥かに超えるほど難しかった。・・・・・・主に丸くするところ。

「何でこっちの世界の挽肉はまとまりにくいんだよ!」

 現実世界の挽肉はそれなりにまとまりやすいのだが、こっちの世界のは非常にまとまりにくい。いくら水分を含ませてもまとまる気配を見せなかった。遂には妥協してしまったほどだ。

「とまぁ、それっぽくは出来たし、結果オーライということで・・・・・・」

 またまた妥協。でも、見た目だけで言えばハンバーグその物だ。我ながらいい出来だと思う。

 焼けていない面を焼いている最中に手際よくソースを作る。俺は王道のデミグラスソース派こと、デミ派だ。中には和風ソース派こと、わふソ派もいるみたいだが、それは論外。デミこそ至高!至福!神!・・・・・・全国のわふソ派の皆さん、ごめんなさい!

 ちなみに、この省略は勝手に俺が考えたやつだ。仙台の友達とは通じあっていた。・・・・・・と信じたい。

 デミグラスソースを肯定するにしまくりながらも、手際よく材料を混ぜて完成させた。ハンバーグの様子を見てみると、見計らっていたのかというくらい綺麗に焼けていた。

「ふー、これであとは皿に盛り付けて完成だな。二人で二つというのも物足りないが、まー仕方ないか」

 俺が分量を間違えなければ一人で二つ食べれたのだが・・・・・・致し方ない。

 皿の上には楕円のハンバーグが一つ。以上。他に何も盛り付ける必要は無い。キャベツなど盛り付けた日には発狂レベルだ。せっかくのハンバーグの下にキャベツを敷くという荒技をされると、主役のハンバーグを食べる時に脇役の身分で主役にくっついてきやがる。ハンバーグが食いたい時にそんな事があると俺は非常にショックを受ける。そして発狂する。

 とまぁ、こんな腐った考えを持っているのであえて何も盛り付けずにハンバーグを皿の上に置いて、その上からデミグラスソースをかけて完成という簡単な盛り付けだ。

 さて、夜空のはどうしたものか。キャベツは必要なやつか?はたまた俺と同じ考えの持ち主なのか?

 キャベツを抜いて文句を言われると嫌なので、申し訳程度に皿の端にキャベツを設置してから接点がないようにハンバーグを慎重に置いた。デミグラスソースもしっかりとかけた。

「うし、完成!」

 一人寂しくガッツポーズをして完成させたという達成感に浸る。

 そうしていると、ベッドの方から呻き声が聞こえたかと思うと何かが立ち上がった。

「大丈夫か?」

 開口一番に出た言葉がこれだった。

「・・・・・・私、どうしてたのかしら」

「料理作ってる最中にぶっ倒れたんだよ。まだ熱あるみたいだから今日もゆっくり休んどけよ」

「そう・・・・・・ごめんなさいね、迷惑ばかりかけて」

「別に気にすることねーよ」

 いいや、俺としてはすごい気になる。──昨日の夜空は何だったのか。どうして俺を欲したのか。真相は闇に包まれていた。それを明らかにしたい。

 けど、夜空がこんな様子では聞こうにも聞けない。俺の本能がそう言っている。

「・・・ハンバーグ」

 俺があれこれ考えていると、夜空は呟いた。どうやら食欲はあるようだ。それだけでいい。風邪をこじらせた時は何より食うのが大事だ。

「おう。分量間違えて二人で二つしか作れなかったけど・・・・・・足りなかったら言えよ。他に作ってやるから」

「その厚意だけ受け取っておくわ」

 口ではそんなことを言っているが、体は嘘をつけないようだ。勢いよく。それも喉につまらせるほどの勢いでがっついている。てか、いつの間にここから持っていったのだ。

「はぁ、わかったよ。今他に作ったる」

「何や何やー!あんたらだけで飯とはー!あたし許さへんでー!」

 夜空の食べる勢いにも負けないほどの威力で扉が開かれる。そこにいたのは……。

「っ!おまえら!何でここにいるんだよ!?まだ朝だぞ!?」

「そりゃあ、昨日の昼間っからいなかったからなぁ!心配になって来てみたんだわぁ!」

「隼斗の部屋を覗いて見たら誰もいなかったから、もしかしたら夜空の部屋かなーって思って!そしたら何と大当たり!」

 リリは元気そうに言い放った。もちろん、ローレルとアリオスもいつも通りといったところだ。

「そ、そのぉ・・・・・・私たちもお腹がすいてましてぇー・・・・・・」

 ますますコミュ障になっていくシャイターン。アリオスが彼女をシャイと呼ぶのに合点がいく。

「・・・・・・わかったよ。夜空も足りないみたいだし、ついでに作ってやるよ」

「うぉー!隼斗の初めての手料理、楽しみやなぁ!」

「そうですねー。本当に作れるんですか?」

 レナなどうやら信用しきれていないらしい。料理についてだが。

 気づかれないように横目でウミを見ると、レナと同意見だと言わんばかりの顔をしている。

「ちょっとは俺を信じような!?ほら!これが証拠だよ!」

 と、俺が食べるハンバーグを観衆に披露すると、感嘆の声や驚嘆の声、様々な声が聞こえた。

「これ、夜空が作ったんやな!」

「ちげーよ!だから俺だって!少しは認めてくれよー!」

 「あっはっはは!いやー隼斗を弄ると予想以上の返事が来るから楽しいねー!」

「夜空に続いておまえらまでドSになるのか・・・・・・」

 普段、あまり俺が弄られていても必死に堪えているのかわからないが、俯いて聞いていないようにしているシャイターンとサリアも今は大袈裟なくらいに笑っている。これはこれでありかもな。ん?何かドMに目覚めるような気が・・・・・・それはいかん!

「とっ、とにかく!今から簡単に作れるようなの考えるから少し静かにしててくれ!あー夜空!おまえはベッドに横なってろ!」

 自分のことよりも礼儀を重んじる夜空はベッドから起き上がり、テーブルの前に背筋を伸ばして正座をしている。それだけ見れば礼儀正しくて可愛いく思えるのだが、中身を知ればそんな感情はどこか遥か遠くに吹き飛んでしまう。

「あら、どうしてかしら?」

「病人だからだよ!大人しく言うことを聞け!」

「あなたはそればかり・・・・・・。少しは私を信用してみては・・・・・・」

「寝てろ!」

「はぁ・・・・・・」

 渋々といった感じで夜空は布団に潜る。さすがに人目が多くて、それを気にしてなのか、壁側を向いてこちらに背を向ける形で横になっていた。

「とりあえず一段落だな。次はっと、何作るかだよなー」

 思いつく限りの料理を思い浮かべる。そしてその中からキーワードを設けて絞っていく。

 簡単、朝食、大人数、男女混合……。

 四つだけなのだが、引っかかる料理が見つからない。

 頭を抱えて悩んでいると、不意に声をかけられた。

「スパゲッティなんてどうかしら?」

 背を向けたまま発せられた声だったので、多少聞き取りにくかったが、要点だけは捉えれたので聞き返さずに済んだ。

 そんなことより……。

「おまえ、朝から麺類いけるのか!?」

「さっきハンバーグを食べたから問題ないわよ」

「少しは俺らのことも考えてくれよ・・・・・・あ、俺は腹減ってるからむしろウェルカムだけど」

 俺と夜空のやりとりに首を傾げてただ傍観するくらいしかできない七人は、とりあえず口は出すまいと決意しているようだった。ありがたい心がけだ。

「じゃあスパゲッティでいいか?」

 そして俺はその良心を踏みにじるように質問をする。どんなものなのかわからないやつらに聞くのは人としてどうかと思うが、一応聞くだけ聞いてみる。

「よくわからねぇが、俺たちぁ食えれば何でも構わねぇ」

「そうか、それならスパゲッティで決まりだな。麺茹でるのに少し時間かかるけど許してな」

「いくらでも待つから大丈夫だよー!」

 相変わらず元気そうなリリは俺の傍まで来て、

「何か手伝えることなーい?」

 なんて聞いてきやがる。

「特にこれといっては。てか、どんなものかもわからないのに手伝えるのかよ」

「指示されれば何となくでやるから大丈夫だよ?」

「そういう挑戦心が料理をダメにするんだ!」

 これは実体験だ。昔、父ちゃんが出張で家にいない時に限って母ちゃんがインフルエンザにかかるという、大災難に見舞われた。その時に俺は作り方も知らないカレーを作ろうとしたところ、全く別の代物になってしまったという黒歴史がある。当然、勿体ないので綺麗に食べきったが。

「いいか、手を触れるなよ?そこからそれ以上足を踏み入れるなよ?いいか?絶対だぞ?」

「うん!わかった!」

 言葉に反してリリは堂々と足を踏み入れてくる。その事だけに意識を回していたため、彼女の後ろから迫ってくる無数の影に気づくのが遅れてしまった。そしてわ結界線を堂々と無視して俺の周りを囲むようにして俺の手元を見ている。

「ほらぁ!作った作ったぁ!」

「集中できねーし具材とか取りにくいんだけど・・・・・・」

「しゃーないなぁー、それなら前の方絡みとくわー」

 ローレルはそう言うと、俺の隣からシンクを挟んで対面に居座った。

「そこはそこで気が散るけどな!まー隣にいられるよりかはずっとマシだ。ほら、おまえらもそっち行ってろ」

 しっしっ、と 手だけで態度を示すと、とぼとぼと他の六人はローレル付近に移動する。

「さて、まずは麺をだな・・・・・・」

 隼斗キッチンの始まりだ。



 ○○○



 「・・・・・・これで完成だ」

 人数分盛り付けた皿を披露すると、感嘆の声だけが聞こえた。

 すごいなぁとか、うまそーやなーとか、おいしそーとか、は、早く食べたい・・・・・・とか様々だ。

「ほれ、そっちに持っていって早く食え」

 顎で促すと、全員はスパゲッティの盛られた皿を手に取り、定位置まで持っていく。どうやらテーブルの座席表が存在するようだ。今まで目にしたことはないが。

「おーい、夜空さーん。できましたよー」

 覇気のない声で叫ぶと、夜空は寝返りを打つようにしながら起き上がった。随分体の使いこなしが上手い。

「やっとできたのね。一つ聞くけれど、私のは大盛りよね?お腹が減って今にも死にそうだわ」

「ハンバーグ食ってそれかよ・・・・・・カロリー摂取量には気をつけろよな」

 夜空は痛いところを突かれたような顔をしている。だが、空腹には抗えないようだ。一歩。また一歩と、ゆっくりとテーブルに向かってきている。

 空いてる席のうち、片方に腰を落ち着かせ、夜空が着席するのを皆で待つ。・・・・・・何で空いてる席が俺の隣なのだ。

「ほなぁ、いただきまぁす!」

「いただきまーす」

 恒例のアリオスの号令と共に食事が開始される。何故かみんな空腹のようだ。

「ところでおまえら。朝食は食ったのか?」

「いんやぁ、食ってへんで」

「何故に?」

「だってなぁ、今日の朝ご飯は隼斗達と食べるってことになってやからな」

「初耳だぞ・・・・・・」

 一体誰がそんなことを?頭にハテナを浮かべたが、無駄な事だと思いそれをすぐに潰す。食べるのに夢中になっている特殊部の部員達を見ていると、自然と思考を停止できた。

 さて、俺も食うか。

 隣では夜空がスプーンも使わずに、蕎麦をすするようにして食べている。なんてはしたないのでしょう。

 俺は律儀にフォークとスプーンを使い、上品に食べている。それを夜空を除く部員達は横目で俺の食い方を盗み見ては真似をしているようだ。微笑ましくてつい、笑ってしまいそうになるが、必死で堪える。

 そして、沈黙が訪れる。フォークが皿に当たるかちゃかちゃという音と自分の口の中で噛み砕かれる麺の音以外は一切無い。あと、隣でずずずーっとパスタをすする下品な音も除いて。

 その沈黙を破ったのは、意外な人物だった。

「そう言えばシャイターン。私たちの決着はまだついてないわよねー?」

 サリアはいつだって唐突に何かを言い出す。

「そうね。それがどうかしたのかしら?」

 普段はコミュ障なシャイターンもサリア相手だと人柄がガラッと変わる。こっちのシャイターンの方が話しやすいし、いいと思うのだが・・・・・・。

「あの時は一時休戦ということで手を打ったけど、そろそろ体力も回復してきた頃じゃないかな?」

 試すような目でシャイターンを見つめるサリア。

「あーそうね。そろそろ私も始めてもいいと思ってたのよねー」

 どうやら、彼女らにとっては売り言葉に買い言葉らしい。睨み合っては火花を散らしている。

「じゃあ、今度こそ決着をつけましょ!これ以上長引かせるのは私としても気が引けるわ!」

 知ったことじゃないが、どうやらそろそろ闘い疲れてきたらしい。それはシャイターンも同じようで。

「そうね。なら、今週末に決着をつけるというのはどう?」

「望むところよ!今度こそ・・・・・・私の本気を見せてやる!」

 ヴァンパイアのはずなのに、鬼気迫るものを感じる。

「それは私もよ・・・・・・本当の悪魔の力を見せてあげるわ!」

 こうして、週末に彼女らの長きに渡っているらしい決闘の決着をつける約束が結ばれた。ちょっと休みたい気持ちもある。

「もちろんあんた達も強制参加だからね!」

「見学役として!」

 勢いよくその場に立ち上がり、息ぴったりのコンボで俺らに指を指しながら残酷な宣告をする。

 まー別に見るのはいい。見るのはいいのだが・・・・・・。

「・・・・・・それ、危なくないよね?」

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