第2話 陸斗と昴にある因縁

陸斗と昴にある因縁。ー1ー


「な、何なんだよ! あいつ! 」

「昴くんがまさかあんなゲス野郎だったなんて。しかも陸斗の従兄弟……」


姫島くんと綾ちゃんは昴くんの悪口を言う。


合コンで出会った高宮昴くんは陸斗くんの従兄弟で今は新人声優。まさかまた会うなんて。


「あ、あのね! 陸斗くん、謝りたい事が」

「蜜葉? 」

「ごめんなさい。友達に飲み会って騙されて合コンに参加しちゃった。昴くんとはそこで会って。あ、でも! すぐ私帰ったし、やましい事は何も無くて……きゃっ」


陸斗くんはいきなり私を抱き寄せる。


「大丈夫、信じてるから。でも……もう絶対あいつと関わらないで」

「陸斗くん……」

「あいつは女好きだし、ろくな奴じゃないから」

「う、うん。分かった」

「こーら、二人とも。あたし達の前でいちゃつくな」

「見せ付けやがって」


綾ちゃんと姫島くんにからかわれると、陸斗くんは私を抱きしめるのをやめた。


「お酒飲みたい。思いっきし強いやつ」

「あらあら、陸斗ったら大丈夫? なんか、荒れてる? 」

「陸斗、昴の事になると荒れるから」

「あいつだけは許せない」


こんなに怒ってる陸斗くん、初めて見た。


「どうして、そんなに仲が悪いの? 」


私は従姉妹とそんなギスギスしたりしない。だけど、二人はやけに険悪な感じだ。


「結斗にしか話してないんだけど、実は俺……小さな頃にバイオリンを習ってたんだ」

「ええっ!? 陸斗ってやっぱりお坊っちゃまなのね」

「綾斗ほどじゃない。父親が会社の副社長で少し裕福なだけだ」


確かに陸斗くんの家って広いし、高そうな家具ばっかだった。というか、創作研究部の男子皆お金持ちなんだよね。私の家だけ普通だ。


「副社長なの? 陸斗のパパ」

「ん。社長は昴の父親」

「そうなのね。でも、バイオリンやってたなんて素晴らしく萌える設定じゃない! どうしてあたしにネタ提供してくれなかったのよ? 」

「話したくない過去だったから」

「陸斗、無理に話す必要はねぇよ。思い出したくねぇんだろ? 」

「いいんだ、結斗。蜜葉と綾斗にも知って貰いたい、ちゃんと」


陸斗くんは暗い表情で話し始めた。


「5歳の時、バイオリンを始めた。最初は楽器なんて初めてで全然上手く弾けなかった。でも、続けていく内に上手くなって楽しくなってきて。俺が演奏会で発表する度に喜ぶ両親の顔を見るのが好きで、ずっとバイオリンを弾きたいと思うようになった。バイオリニストに憧れた」

「そうだったんだ……」

「ああ。だけど、俺が小3の時に昴もバイオリンを始めた。あいつは初心者なのに俺が5歳の時に弾けるまで3ヶ月かかった曲を一週間で弾けたんだ」

「えっ……」

「コンテストでも初めて出たというのに俺を差し置いて入賞した。とにかく悔しくて。ずっとやってる俺よりもあいつのが才能があったから。だけど、あいつはコンテストで入賞したらすぐバイオリンをやめた。天才こどもバイオリニストって新聞に載るまでになったのに」

「どうして辞めたの? 」

「りっくんがやってるからやったけど、りっくんに勝ったら満足したって」

「えっ? 」

「りっくんがずっと一生懸命やってるから楽しいのかって思ったけど、簡単に出来るようになったし、俺みたいに上手く出来ないのに一生懸命何年もやってるりっくんってバカだって」

「ひどい! 陸斗くん、頑張ってたのに」

「でも、それを聞いて自分でもバカらしくなった。俺は何年練習しても入賞出来なかったのに始めてほんの数ヶ月であいつは入賞して、俺よりも早く上達した。昴と違って俺は才能が無いんだって自覚して一生懸命やっても駄目なんだって思ったら弾けなくなった」


昴くんの言葉のせいで続けられなくなっちゃったんだ……。


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