新しい加護でもちょっと駄女神だよ
今回もいつもの教室。いつものメンバーだ。
「よし加護を与えるぞ」
「もう決まったんですの?」
「おう、俺が決めてきた。お前らの素質を伸ばすぜ」
そんなわけでまずサファイア。こいつは勘を伸ばす。
「はい完了」
「…………何がどうなったの?」
ピンときていないようだ。
そこで透明な魔力球を生成。魔力も他人には感知できないもの。
それをそーっとサファイアに近づける。
「ん? なにこれ?」
平然と掴む。よしよし、ちゃんと加護は発動しているな。
「魔力の球だよ。周囲に漂わせた」
もちろん殺傷能力も強い衝撃もない。
そんなん体罰と変わらんだろ。勇者のやることじゃないぞ。
「よくできました」
「結局どういう事?」
「ざっくり言うと勘を上げた」
これがサファイアの新能力。
第六感などの勘を超人的なまでに高め、新しくカスタマイズできる。
「野生の勘と第六感を混ぜるのさ。超人的な感覚になる。そこから七、八と自分だけの感覚を研ぎ澄ませ。先を自分で作っていくんだ」
「さらに野生児に近づいていますね」
「野生児言うな! わたしそんなんばっかりじゃない!」
「つっても長所なんだから伸ばそうぜ」
女神っぽくはないが、勇者に与えたら強いだろう。
基礎ができているほど、こういう応用が効く。
「どうせ先生も作ったんでしょ? それはどうしたの?」
「十八感くらいで飽きた」
作るの面倒になって放置しました。
だって無くても敵の攻撃が効かないし、殴ると死ぬし。
「ま、損はないよ。保証する」
「そこは信じてるけど……うーん女神っぽくないわね」
「気にするな。んでもってローズはこれ」
俺の姿を消す。同時にローズも消える。
「これは……私が消えた?」
「透明化だ。気配まで消せる」
「便利そうですわね。なぜローズに?」
「ローズの問題点はすぐ脱ぐこと。脱衣闘法とやらが勇者に拒まれる要因でもある。だから透明になっちまえば、ひとまず解決できる」
これは折衷案というか妥協というか。
まあとりあえずの措置である。
「なるほど。裸体を見せることができなく……あまり興奮しませんね」
「せんでいいせんでいい」
「でも強そうでよかったじゃない」
サファイアが普通に透明なローズの肩に手を置いている。
「お前わかるのか?」
「ん? 声がするし、なんかいる気がしたわ」
「流石は野生児ですね」
「完全に気配を絶ったはずですが」
「俺や勘が異常に発達したやつは、なんとなーく理解できちまうのさ」
そこが弱点。過信は禁物。
ただ気づかれても透明のままなので、そこは応用力の問題である。
「はい終わり。普段は使わないようにな。戦闘か訓練で使え」
「了解です」
「次にカレン」
「はい! いよいよわたくしですわ!」
「カレンはざっくり言うと超能力だ」
ぱぱっと加護を与えてあげる。正直カレンは迷ったよ。
「超能力ですか?」
「カレンはスタンダードに強い。無効化能力もあって、自力で強くなり続ける事が可能。だから変化球入れたかった。レベル1なら物がちょっと浮くくらいだな。あとは金縛りだ」
「ちょっと浮く……ううぅぅぅ……えいっ!」
机がちょっとだけ浮いた。初めてにしちゃ上出来だな。
「そのうちテレパシーとか透視とかできるはず。テレポートは危ないから俺がいる時にやること。まあ女神ならどうにでもなりそうだが」
「気をつけますわ」
さてここからだ。軽く戦闘してみよう。
「んじゃ校庭にワープだ」
全員まとめて瞬間移動。
こういうのは実戦あるのみ。
「お前らの分身を出す。頑張って倒すように」
全員の分身を出して、新加護を積極的に使うように設定した。
「はいじゃあよーいスタート」
一斉に戦闘態勢に入るも、敵カレンの金縛りにより、ローズとカレンが止まる。
「しくじりましたね。予備動作が見えないとは」
超能力は念じると出る。つまりぱっと見て警戒できない。
「なら潰せばいいのよ!」
サファイアのみしっかりと回避。軽く予知能力の域だな。
そのまま偽カレンの撃破に向かうも、サファイアのパチもんに阻まれる。
「邪魔よ!」
そこでくるりと回転し、背後から迫っていた透明な敵ローズを避ける。
「あっぶな……見えないのはずるいわよ!」
「それをかわせるのもどうかと思いますわ」
「まったくです。ですが、金縛りは圧倒的パワーで解除できるようですね」
太陽エネルギーをプラスしたローズを止められるほどの威力はない。
そのまま透明化し、偽カレンを狙う。
「いただきますよ」
偽サファイア渾身のブロック。
いまいち決め手にかける勝負が続く。
「がんばれー。うまいこと勝てー」
ポップコーンとジュースを出し、椅子に座って観戦。頑張れ駄女神。
「くつろいでんじゃないわよ!」
「どれか一体をまず倒しましょう」
「サファイア、金縛りの方向と、透明化は見切れますの?」
「無理ね。同時は無理。ローズも速くなると見切れないわ」
「ならば手段は一つですね」
作戦は決まったらしい。
そこで偽ローズから魔法の連射による足止めが入った。
「私の魔力は、この程度ではありませんよ」
全弾同じ魔法で迎撃している。
やるね。咄嗟の判断力がついてきているのか。
「ここですわ!!」
カレンのフルパワー超能力により、偽ローズの体が浮く。
そのままサファイアへと急接近。
「そこだ! 女神炎光波!!」
しっかりキャッチし、火柱が偽ローズを包む。
これにて偽ローズ撃破。ちなみに太陽のパワーは無し。
そこまで強くしても、新能力のお披露目にならない。
「続けていくわよ! ブリューナク!!」
必殺技の体勢に入ったサファイアを、金縛りが襲う。
「まあそう来ますよね」
「ですわね」
その横を二人が駆け抜ける。
そちらにも金縛りをかけようとしているようだが。
「なるほど、そう来たか」
カレンがローズと手をつないだまま走っている。
無効化能力だ。敵の超能力を消し続けているのだろう。
二人の両腕が交差し、そのまま偽カレンを襲った。
「女神クロスボンバー!!」
魔力を込めた一撃で、見事偽物を粉砕。
あとは偽サファイアだ。
「シンプルに強いというのは厄介ですね」
「ですがもう三対一です」
サファイアと偽サファイアの時点で実力差があるのだ。
そこから多勢に無勢ってのはしんどいのさ。
「さて、分身の術といきましょうか」
透明になったローズがさらに分身する。
えぐい使い方しやがるな。
流石に全方位からくる分身に対処することはできない。
「勘だけでは生き残れない領域です。あとは任せますよ」
「動けようが動けまいが、ここまで弱れば問題ありませんわ」
カレンの魔力すべてをケリュケイオンに集約。
稲妻が渦を巻き、偽サファイアを巻き込んでいく。
「極光雷撃!!」
雷のような閃光を残し、完全決着となった。
「よーしそこまで。よくやった」
それほど強く設定しなかった分身だが、それでもスムーズに倒した。
戦闘面は着実に成長しているようだ。
「はー……つっかれた……」
「自分と戦うというのは、なんとも不思議な感覚ですね」
「能力に慣れるには最適さ。欠点も同時にわかる」
「確かに、なんとなく掴めましたわね」
こういうのは言葉だけでは足りない。
一気に全部教えようとしても無駄だ。
徐々に覚えてくれたらいいさ。
「よし、じゃあ反省会しながら飯でも食いに行くか。何食いたい?」
「お肉!」
「高級食材を希望します」
「では高級なお肉ですわね」
食い意地張りやがって。
そこはもうちょい女神っぽいもん食おうぜ。
女神っぽいのが何かは知らんけど。
「女神ランキング上位の行く、隠れ家的焼肉屋が特集されてたわ!」
「しょうがねえそこでいいか」
「やったー!!」
「気が変わらないうちに行きましょう」
大はしゃぎである。お前ら本当に俗物だな。
カレンが俺の横に来て、小声で訪ねてきた。
「お値段大丈夫ですの?」
「ああ、問題ないよ。給料もあるし、適当に宝石とか錬金して売った」
金に困ることはない。今から作るのも面倒だし、今日は外食でいいだろ。
頑張ったこいつらに、ちょっとだけ贅沢させてやることにした。
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